導入事例6

島津印刷株式会社

島津社長

木川取締役

小林部長

リョービ両面兼用機で初のLED-UV水なし印刷に成功
オペレータ育成、工程短縮で大きな成果 メンテナンスの作業負担も軽減

新潟県の総合印刷会社である島津印刷は、リョービ製両面兼用機では初となるLED-UV対応の水なし印刷を成功させ、生産効率化、働き方改革、人材育成、コスト削減に大きな成果を得ている。Try and error for Success! を社是とする同社で、島津社長と木川博司取締役工場長にインタビューし、島津印刷と水なし印刷の関わり、取組みの背景、導入効果などを聞いた。

水なしLED−UV両面印刷への挑戦

島津印刷はグループ企業5社からなる島津グループの中核を成し、B縦半裁8色輪転機2台、B1サイズ8色枚葉機1台、今回水なし印刷での稼働を開始したRYOBI928P LED‐UV乾燥機付A全サイズ片面8色両面刷(4+4色)兼用枚葉機などの印刷機を保有されている。

また、グループ会社には大ロットオフ輪を主力とするアステージ、パッケージを扱う北都、小ロット印刷の朝日印刷、広告代理店のタクトがあり、クリエイティブを含め多様な分野で事業展開中だ。

水なし印刷については平成26年にグループ会社の北都で稼働していた両面専用機のファンアウト改善の目的で導入され、導入後10年経っていた印刷機でジョブ数が2倍になるなどの大きな実績を上げた。

さらに、短納期対応を目的にLED‐UV対応の水なし印刷を検討することになる。

東レをはじめ、富士フイルムや機械メーカー、インキメーカーが協力してくれるとのことだったので挑戦することになった。心配だったのはLED‐UVでコート紙に印刷した場合の光沢感の不足だった。しかし、関西の会社で実際に見学して問題ないと判断した。両面反転機での静電気の影響などを調べるため夏と冬の2回テストを行い、これもほぼクリアした」(島津社長)

社長によると今年1月から実稼働を開始、現場の責任者である小林正規生産部印刷課部長のもとで一気に成功に持ち込むことができた。インキメーカーも水なしLED‐UVインキの開発に協力的で、改善要望にスピーディに応えてくれている。

水なし印刷に挑戦する理由 働き方改革と女性オペレータの育成

当社は『トライ・アンド・エラー・フォー・サクセス』を社是・合言葉として、いちばん最初に道を行こうという理念がある」と語る島津社長。その言葉どおり、最初に同社がLED‐UV対応の水なし印刷に取り組んだのは11年前にさかのぼる。

あまり外部には公開していなかったが、当時導入していた小型DI機に後付けでLED‐UV照射装置を装着し水なし印刷にチャレンジした。島津社長は「あの取組みがあったからこそ現在につながっている」と言う。今回の両面兼用機におけるLED‐UV対応水なし印刷もそうしたチャレンジ精神が背景にあったことは間違いない。

ただ一方で、オペレータの早期育成や次工程への時間短縮に伴う働き方改革、環境対応も取組みの大きな理由だ。

現在、同社に限らずなかなか若者の技術習得が追い付かず、機長が育たないことに悩まされている会社は多い。その点、湿し水を扱わない水なし印刷になれば現場も楽になり、人材も短期間で育成しやすくなる。

木川取締役は「湿し水とインキバランスの調整作業から解放され過乳化など湿し水起因の問題がなくなり、インキの濃度や見当調整に集中できる」と水なしの利点を語り、また島津社長も「水なし印刷は印刷の仕組みそのものを簡単にしており、後はインキの性能とオペレータの見る目にかかってくる。つまり、技術的には極めて楽になるということだ」とメリットに確信を持つ。

特に水なし印刷の特長として挙げられるのは準備時間の減少だ。

「見当合わせにかかる時間が半分以下になるわけで、非常に作業が楽になる。また、UV印刷なので刷了後の乾燥時間の問題も解消した」(木川取締役)

さらに、小林部長も「メンテナンスでも水あり印刷時に必要だった水まわりの作業が省け、時間短縮になり、後片付けも早くなった。インキローラーのニップを管理すれば問題ない。逆に印刷機の基本操作に集中できることでオペレーション技術の早期育成につながっている」と現場視点での導入効果を語る。

もっとも、今回の取組みで全く課題がなかったわけではない。

両面兼用機の場合、反転機構の部分で静電気が発生するため、紙揃えやしわが出やすくなるなどの問題があった。しかし、除電装置をデリバリー側に装着してほぼ解決でき、現在では反転機構部分への除電装置装着も検討しているところだ。

現在、水なしに取り組んでいる会社では、女性のオペレータが活躍しているケースが多く、島津印刷でも水なしへの取組みに続いて、女性オペレータの育成を考えているという。

水なし稼働中のリョービ社LED-UV印刷機

CTPセッター

環境対応にもメリット

さらに島津印刷では環境対応の切り口でも水なし印刷に大きな可能性を見出している。

「北都に続き、バタフライマークを島津印刷でも取得したが、今後、環境対応が大きなファクターになることは間違いなく、マークの取得によって営業展開も変わってくるかもしれない」と木川取締役。

昭和24年に創業した島津印刷は平成23年、アステージの前身である三幸堂を吸収し、翌年には北都をグループ傘下とした。いずれも経営不振の2社を再建支援することで地域雇用を確保し、新潟県から経済振興賞を授与されている。次に考えているのは、グループ会社個々の特性を活かしたグループ全体の最適化の推進だ。特に人材配置の最適化に注力していくという。

「今後、定年がピークになり大部分が継続雇用になる。そうした人材は技術を持っていても体力は低下してくるため、省力化の設備投資が必要だ。今回の水なし印刷もその一環としての取組みと言える。これから印刷に関わるものは環境対応と働き方改革は避けられないだろう」と水なし印刷導入の意義を語っていた。

島津印刷株式会社
代表取締役:島津延明
新潟県新発田市冨塚1419
U R L:https://shimazu-pnet.co.jp/
導入日:2019年2月