導入事例1

キング印刷株式会社

代表取締役 伊東邦彦 氏

東日本大震災を契機にした『水なしLED-UV印刷』への転換

キング印刷株式会社の創業は1958年。以来地元企業として、福島県福島市をはじめ県内の企業や公共機関などを主な取引先として成長を続けてきた。Windows95がリリースされた1995年には、デジタル映像・音声の編集にいち早く取り組み、時代の変化に素早く対応した。しかし2000年代にはデジタル化の波がさらに加速し、家電量販店で安価なデジタル機器が販売されるようになると需要は先細りの一途をたどった。

2011年3月11日、そこに追い打ちをかけるように東北地方太平洋沖地震と福島第一原子力発電所事故に見舞われた。「会社は簡単に潰れるものだ」キング印刷株式会社の伊東邦彦社長の言葉にはこのときの喪失感が如実に現れている。県内一帯に明日をも見通せない重い空気が漂う中、後の『水なしLED-UV印刷』導入に至る伊東社長と社員たちの苦心の日々が始まった。

震災がターニングポイント「倒れるなら前向きに」

“パッケージ印刷をメインにし小ロットにも対応する”これは、東日本大震災という未曾有の惨禍の渦中にあって、伊東社長が掲げたキング印刷の新しいビジョンだ。「倒れるなら前向きに行くしかない」という強い意志のもとに行ったこの決断は、現在の同社につながる大きなターニングポイントとなった。2014年のことである。

パッケージを主力としたのは、今後も需要が激しく落ち込まないのを予想してのこと。さらに販路を広げる工夫として、食品向けのパッケージにも対応できるようにUVインキ独特の臭いが抑えられるLED-UVを導入した。この際、印刷機を菊全判4色機・菊半裁5色機・菊半裁4色機・A3判4色機・A3判2色機の計5台に集約し、メンテナンスの頻度・精度を上げることも目指した。

小ロットへの対応は、顧客をパッケージ印刷会社に絞ったことで導き出された戦略だ。地域のパッケージ印刷業者との共生によってコストや品質による競争を回避し、Win-Winの関係を築けるよう配慮した。もちろんこれが最終的にクライアントの満足にも結びつくと確信しての決定である。

また、伊東社長はこの2つの自社改革に連動して、小ロットのパッケージでもコストを抑えて安定的に製品を供給するための加工機の導入や、同梱する能書の印刷や折りの生産ライン新設も推し進めた。より広範な受注と顧客のユーザビリティとを両立するために、納期に柔軟性をもって対応するようにしたのもこの時期からである。

小森コーポレーション
LED-UV 菊半4色機

ハイデルベルグ
LED-UV 菊全4色機

CTP自動現像機

社内で目標を共有し『水なしLED-UV印刷』の技術確立に成功

「お客様に印刷の技術力ではなく価格で判断されてしまう状況を変えたい」伊東社長の意志は徐々に社員たちにも波及していった。わずか数年でほぼすべての生産設備を入れ替えるという大胆な変革も一丸となって達成できた。そして新しいチャレンジとして同社がターゲットにしたのが『水なしLED-UV印刷』の技術を確立することだった。

『水なしLED-UV印刷』のメリットには、高濃度のインキでも安定性が確保できるのをはじめ、ファンアウト発生が抑制されることによる見当精度向上や能書など薄紙印刷の品質向上、インキ使用量や損紙の低減などがある。デメリットはエッジピックやモットリングなどの問題が発生しやすい点だ。

「すべての社員がお客様が何を要求しているのかを理解している会社にしたい」高い技術力が必要となる新しい技術の導入も、その目的を共有した社員たちにとってはむしろ望むところだった。こうしてキング印刷では『水なしLED-UV印刷』に着手したのである。

技術を確立するにあたって同社は、水なしCTPで高い技術を持つ東レを筆頭に、インキやブランケットの各メーカーを加えてテストを繰り返した。そしてチャレンジ開始8ヵ月後、ついて『水なしLED-UV印刷』による製品の出荷を開始。現在ではメインで稼働している菊全判4色LED-UV機が水なし専用機となっている。

東日本大震災を乗り越えた『水なしLED-UV印刷』の成果

現在、キング印刷が取り組む新しいチャレンジは、A3判縦通し4色機及び2色機の『水なしLED-UV印刷』への対応だ。将来の展望には『水なしLED-UV印刷』を用いたFMスクリーニング印刷も含まれる。伊東社長の「当社は生き残ります。それを実現できる人材も育っています。」という自負は、こういった積極的な新技術の開拓に裏付けられているのだ。

これは、東日本大震災という逆境の中、伊東社長が打ち出した方針が見事に結実した成果と言える。もちろんこの果実は技術の確立のみによって得たのではない。あるとき、『水なしLED-UV印刷』の技術を営業の武器にして欲しというオペレータからの申し出があったという。改革の芽が社内のいたるところで育っている証左である。

そして伊東社長は『水なしLED-UV印刷』と両輪を成す次の戦略として、「“環境”をキング印刷のブランドイメージにしたい」と語る。「パッケージ印刷の大前提は安心・安全。“環境”と真摯に向き合うことが付加価値になる」とも。キング印刷の未来に大いに期待したい。

キング印刷株式会社
代表取締役:伊東邦彦
福島県福島市下鳥渡字新町西6-1
U R L:http://www.king-p.co.jp/
導入日:2017 年1月