導入事例4

株式会社ファビオ

代表取締役 池上鎌三郎 氏

現場力を営業力・経営力につなげた水なし印刷

岡山県岡山市に本社工場を置く株式会社ファビオは、一般商業印刷物を取り扱う印刷会社である。製版会社として創業したが、時代の変化とともに徐々に印刷会社へと業態を変えてきた。そして、2003年、オフセット印刷機を導入した。導入当初は高品質を求められる仕事は少なかったが、営業展開の広がりとともに、高品質が求められようになっていった。そこで、印刷を知らない当社は、多くの問題と課題を抱え、解決策を模索していた。そこで、2013年に「水なし印刷」の存在を知り、菊全判8色機(ダブルデッカータイプ)と菊半裁判片面4色機の2台を水なし仕様に変更した。

「1カ月の損紙が100万円事件」

当社の工場は、昼番と夜番の2組2交代で若いオペレーターが主流となっていた。元々、製版会社からの転身のため、印刷工場にベテランの職人は存在しなかった。そのため、印刷に対する知識不足や経験不足から多くの問題と課題を抱えていた。色が安定しない、裏移りやゴミ汚れによる刷り直しが多く、ダブルデッカー特有の見当が合いづらいなど、ひどい時はひと月に100万円分の損紙を出してしまうこともあった。そのため、お客様からの信頼を失うこととなり、失注したこともあった。

「印刷工場改善の3本柱」

このように、印刷現場の改善が急務となり改善方法を模索していた。ちょうどその頃、東レ株式会社主催の「工場見学&水なし印刷セミナー」に参加し、実際の運用状況を見学した。その見学会で池上社長は「印刷機のメンテナンスがしっかりとできていれば、水なし印刷は容易にできる。」と確信した。そこで当社は、①印刷機の大規模メンテナンスと定期的なメンテナンス、②印刷機の水なし仕様、③ジャパンカラー標準印刷認証による数値管理を3本柱に印刷品質と生産性の改善に取り組むことを決断した。

1 印刷機の大規模メンテナンスと定期的なメンテナンス

汚い印刷機からきれいな印刷物が出て来るわけがなく、大規模メンテナンスに取り組んだ。そして、定期メンテナンスが行き届いていれば、印刷技術も容易となり、安定した印刷が容易なると考えた。

2 印刷機の水なし仕様

水なし化のメリットである高精度な網点の再現性と湿し水による変動がないことにより高品質な印刷を目指した。また、メイクレディ時間の短縮により生産性を向上させ、同時に損紙も減少させることによりコストダウンも図った。しかも、水回りのメンテナンスもなくなり業務負担を削減した。

3 ジャパンカラー標準印刷認証による数値管理

印刷環境や印刷条件をすべて数値化し、経験の少ないオペレーターでも安定した印刷品質が提供できるよう「ジャパンカラー標準印刷認証」を取得した。これにより、連続して安定した印刷ができるように管理体制を構築した。

アキヤマ機械
菊全両面8色機

小森コーポレーション
菊半4色機

「現場力は営業力」

これら3本柱を導入したからといって、直ぐに高品質・生産性向上が実現したわけではないが、日本WPAの会員企業である印刷会社との情報交換や、刷版を供給する東レ株式会社を始めとする日本WPAの協賛会社である印刷機メンテナンス会社やインキメーカー等のアドバイスを受けながら、徐々に自社独自の水なし印刷を確立していった。

以前、印刷工場は24時間稼働であったが、現在は「同じ設備」「同じ人員」の16時間稼働で、売上高は向上している。つまり生産性は飛躍的に向上している。また、印刷事故は激減し、色調も安定し、ファンナウトはほぼ解消され、定期メンテナンスにより機械故障は未然に防がれ印刷機が止まることはなくなった。

そして、信頼を失いかけていたお客様からの信頼も回復し、今では地方の岡山に居ながら首都圏の大手企業の印刷も任されるまでに成長した。営業マンによるものだけが営業活動ではなく、印刷の現場力も営業力であると実感した。

また、「水なし印刷導入」による嬉しい副産物として、印刷工場が明るくなったことが挙げられる。以前は、オペレーターたちだけではこれらの問題解決が出来ず、疲れ切った顔をしていたが、今では明るい顔に変わり工場全体の空気が明るくなった。しかも、以前は社員の入れ替わりが多かったが、今では離職者ゼロを更新中である。

株式会社ファビオ
代表取締役:池上鎌三郎
岡山県岡山市南区新保685番地の3
U R L:http://www.fabio.co.jp
導入日:2013年5月