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VOC測定、削減

2007年07月20日

精英堂印刷でW2インキの性能確認・VOC放散量試験

日本WPAはオフセット印刷工場で、さらなる環境改善をはかる、印刷材料の開発支援に当たってきた。
このたび、インキメーカーの協力を得て、水洗浄性インキの改良テストを精英堂印刷(米沢市)で実施した。前回のテストでは、黄インキの地汚れが起きたが、今回、この改善を図ったジャパンカラーのW2水なしインキで日本初のハイデルベルグ 105XL-6LX-UV機を使ってテストを行った。
18,000回転の最高スピードでテストを行ったが、前回起きた地汚れはものの見事に解消され、全く起きず、かつ、そのスピードに追随してくれるインキであることが確認された。50倍ルーペで確認したが、網点の点質は従来の水なしインキを上回る再現を見せてくれた。ツヤはまずまずの水準に落ち着き、実用範囲と判断した。一連のテスト時に発散されたVOC放散量の測定結果を以下記述する。
seieido-105XL.JPG
ハイデルベルグ105XL-6色UV仕様機(日本初)でW2インキのテストを行う
plate-XL.JPG
105XL機の仕様詳細
昼食後に測定 単位ppm
印刷室 13
従来水なしインキ印刷時   壺の上
第2胴排紙側・墨 19      第2胴・墨 21
第3胴排紙側・藍 16      第3胴・藍 10
第4胴排紙側・紅 29      第4胴・紅 9
第5胴排紙側・黄 31      第5胴・黄 12
seieido-measuring.JPG
その測定風景
先ほど使った、従来水なしインキを洗浄して洗い落とし、W2インキを壺にいれる。このとき、機械の洗浄タンクに内蔵されていた、W社の洗浄液(UVインキ用の洗浄液)をインキにかけたところ、洗浄時には大変高いVOC放散値が露見された。
第2胴給紙側・墨   3200
第3胴給紙側・藍   1900
第4胴給紙側・紅   1800
第5胴給紙側・黄   2800
この時、印刷室内も残留VOCに見舞われ、50?70を示してくれた。そこでこの残留VOCの減衰が図られるまでテストを中断した。15分後に先の通常値13ppmまで下がったことを確認してローラにW2インキを巻いて印刷テストを再開する。
  W2インキ印刷時
第2胴排紙側・墨   26
第3胴排紙側・藍   29
第4胴排紙側・紅   28
第5胴排紙側・黄   21
このとき、W2インキは従来の水なしインキと比べ、そのVOC放散量がさらに低下したとは見受けられなかった。低沸点インキで、共沸により飛ばされたと解釈できよう。
W2インキの印刷結果は冒頭の通りであった。思い起こせば、このプロジェクトの立ち上げを主張し始めて、3年が経過する。よくぞここまでの品質水準に到達したかと、関係者のご努力に感謝したい。最後に、中性水系洗浄液での洗浄作業を行った。
4胴目のブラン手洗い洗浄をテスト品D液で行ったが、落ちは今ひとつであった。この時のVOC放散量は40?60ppmを示す。
5胴目のブラン洗浄は、テスト品E液で行ったが、これも落ちは今ひとつである。VOC放散量は60ppmを示す。ことVOC放散量は大変低い値ではあるが、落ちの性能改善の必要がある。
W3洗浄液X2(中性水系洗浄液)でローラ洗浄を行った。インキは解けてくれたものの、インキの掻き取りが今ひとつ以前の、小森機での結果と比べはかれていない。ところが水で2度洗いをするとものの見事に落ちてくれた。ローラ洗浄のこなし方についてはより精査する必要を感じた。しかし、ことVOC放散の観点からみると、70?120ppmしか放散されていない。試しに第2胴でW社の油性タイプの洗油で洗浄してみたところ、600?900ppmと言う値になった。瞬間では1800ppmを記録してくれた。W2インキの洗浄液ではそのローラ洗浄でのVOC放散量は至って低いことが確認された。
W2インキは今や、商用水準に到達してくれた。この専用洗浄液のさらなる改良が望まれる。