6月7日(木)の午後、名古屋市北区水草町に瀟洒なビルを構える、当会会員企業の山田美術印刷株式会社を訪問する機会を得た。
1958年1月に会長・山田郁夫氏によって創設され、創業して半世紀を間もなく迎えるシール印刷会社である。会長は岐阜県郡上の出身で、今もその縁で郡上市に岐阜工場を構えておられる。また、浜松市にも営業所を構え、片方では地域密着の姿勢を貫いている。現社長は2代目の森川雅弘氏が継がれ、業績は順調に伸ばされ、年商8億円、社員数は53名、名古屋では大手のシール印刷会社の地位を築いている。
小口のリピートものの仕事が中心のシール印刷物をこなすには、顧客の信頼を獲得することが必要である。顧客信頼の構築の仕組みを脈々と構築されたことに同社の存立基盤はある。コストと納期は印刷業では避けられないが、そのためにはできるだけの自社内加工、ワンパスでこなせる仕組みを作り上げてきた。機械台数は陣容にしては多いのもそのせいである。
印刷再現を数段と向上することにつながった間欠水なし輪転シール印刷機
一昔前まで、凸版が中心のシール印刷機の構成であったが、1994年7月にシール業界では他社に先行して、間欠型水なしシールオフセット印刷機を導入した。凸版技術しか知らない技術者集団であり、水を使うことに当時抵抗もあり、それではと、水なし印刷に取り組んだのだ。結果、これにより、デザイン力を一段と上げたシール印刷物を造り上げることができた。
同社の間欠シール印刷機で、マイクロ文字の刷り見本を作り上げていた。高度な偽造防止の観点から、さらなる高度化技術に水なし輪転印刷の技術を使って挑戦してくれている。
シールだけでなく、シュリンク包装品、タグラベルなど顧客ニーズを取り上げた商品開発に努めてきたが、余裕を持って建てたたた工場内には、これ以上機械が入らなくなってしまった。そこでシール業界では珍しい2交代制を数年前から打ち出している。
シールとは商品の顔であり、その品質管理は厳格を極める。ピンホールはもちろん、小さい虫が付着すと、商品価値を台無しにする。従来は人の目での検品であったが、今は、CCDカメラによる、シール検査機で見当ずれ、色ずれ、異物付着、ピンホールなどを発見してくれるようになったが、検査機2台をフル稼働してくれていた。
シール印刷検品機、2台がフル稼働
工場内の入口2か所には、食品工場並みの中間部にエアーシャワーを持たせた2重シャッターを装備している。その上、採虫モニタリングトラップ装置を配置し、同様な虫が入り込んでくるかをモニタリングしている。
中間にエアーシャワーが装備された二重シャッター、2扉を配置
採虫モニタリングトラップ装置
これらの装備は品質にいかにこだわっているかの証である。
加えて、近年、環境配慮を前面に打ち出してくれている。同社のホームページを見ると
「製造工程からも環境保全への取り組みとしての『水なし印刷』のご提案。お客様のあらゆるニーズや『環境競争力』に当社、最新トータルシステムでお応えします。当社は、『日本水なし印刷協会』に加盟し、環境保全活動への取り組みを印刷物を通して提供します。弊社では「日本水なし印刷協会」に加盟しておりますので、当社で製造する「水なし印刷」には「バタフライロゴ」を掲載する事が出来ます。」と、トップページに掲示してくれている。
目下、日印産連のGPマーク取得に向けて、全社挙げて取り組んでくれている。シール業界では先陣を切っての取得となろう。
シールの中に、バタフライロゴをあしらうのは大変難しいものの、顧客は水なし印刷の環境保全性を高く評価してくれる。仕組みとして作り上げた、自然体の努力が顧客に通じているのであろう。社内の礼儀の正しさは一級品で、来訪客には全社員、あいさつを徹底されていた。工場内は、全員が白衣の作業着、キャップ着用が励行され、製薬会社の作業場の様相である。工場見学歓迎とホームページ上でもうたい、まさに、シール印刷に自信を持つ作業集団と見受けた。同社の発展を祈って見学を終えた次第である。