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2007年02月26日

東レ(株)が「環境低負荷な水なしCTP版および印刷システムの開発」で「第6回(2006年度) グリーン・サステイナブル ケミストリー賞(GSC賞)」を受賞

本会の賛助会員である東レ株式会社は、このたび、「環境低負荷な水なしCTP版および印刷システムの開発」の環境負荷低減への貢献が認められ、グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC) ネットワークより「第6回(2006年度)グリーン・サステイナブル ケミストリー賞(GSC賞)」を受賞いたしました。
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受賞者の、東レ(株)小川勇造氏(日本WPA理事)
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受賞記念展示ブースには日本WPA活動、バタフライマークのご紹介
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受賞記念講演には多数の来場者が訪れた
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GSCネットワークは、日本におけるGSC活動※1)を効果的かつ強力に推進するために、2000年3月に化学系の学会・団体および国立研究所によって設立された任意団体であり、2001年度からGSC推進に貢献した業績を対象に「GSC賞」を授与しています。
今回の受賞は、水なしCTP版および印刷システムの環境への低負荷と共に、高い印刷特性、経済的優位性が大きく評価されたものです。
近年、世界的な環境意識の高まりの中、平版印刷業界においても、VOC(揮発性有機化合物)低減やアルカリ現像廃液の削減など、環境問題への対策が急務となっています。また、デジタル技術の進展などを背景に、画像データをレーザーで印刷版に直接書き込むというCTP(Computer To Plate)システムの普及が急速に進んでいます。
東レではこうした背景を受け、2000年4月に、近赤外レーザー光により画像形成可能で、幅広い分野での印刷適正に優れた「水なしCTP版」の開発・製品化に世界で初めて成功しました。この水なしCTP版を用いた印刷システムは、湿し水不要によるVOC低減や水現像方式による廃液レスといった環境低負荷を、印刷品質の向上・安定、コスト低減といった経済性とともに提供する技術であり、まさに、化学技術の革新を通して持続可能な社会の実現に貢献するというグリーン・サステイナブル ケミストリーを具現化したものです。
※1 GSC活動
化学に係わるものが自らの社会的責任を自覚し、化学技術の革新を通して「人と環境の健康・安全」を目指し、持続可能な社会の実現に貢献していくことを目的とした世界的な活動。
●今回の受賞に関する技術の詳細は下記の通りです。
1.受賞テーマ
「環境低負荷な水なしCTP版および印刷システムの開発」
2.本技術の開発背景と特長
地球温暖化など地球レベルの環境問題が国際的にも議論される中、平版印刷業界においても、VOC(揮発性有機化合物)低減やアルカリ現像廃液の削減など、環境問題への対策が急務となっています。また、印刷業界においては、デジタル技術の進展を背景に、銀塩フィルムをマスクとして用い紫外線照射するという従来の画像形成方式に代わるシステムとして、コンピューター上のデジタルデータを、レーザーを用いて印刷版に直接書き込むというCTP(Computer To Plate)システムの普及が急速に進んでいます。
東レでは、1974年(昭和49年)から高分子化学、光化学をコア技術とした印刷用版材の事業を展開しており、環境負荷の少ない「水なし平版」では先駆者として市場での確固たる地位を築いてきましたが、このような動向を受け、新たに、「水なしCTP版」の開発に取り組みました。その結果、2000年4月に、光(熱)剥離機構と呼ぶ新規な画像形成機構の発明、新たなシリコーンゴム材料の設計・開発等により、近赤外レーザー光により画像形成可能で、一般商業印刷分野から新聞印刷分野など広い分野での印刷適正に優れた「水なしCTP版」の開発・製品化に世界で初めて成功しました。水なしCTP版を用いた印刷システムは、水ありCTP版(PS版)を用いた印刷で必須である湿し水が不要となり、規制の対象となっているイソプロピルアルコール(IPA)を含め、湿し水由来のVOCを8割も低減できると共に、水現像方式により、水ありCTP版の現像で使用する強アルカリ現像廃液を全く出さないなど、極めて環境に優しいシステムとなっています。さらに、印刷品質の向上と安定、印刷コストの低減も図れるシステムです。
3.本技術の主な展開先と今後
昨今の環境意識の高まりを受け、環境問題に熱心な公的機関・企業において、グリーン購入基準などで水なし印刷の指定が行われると共に、その象徴であるバタフライロゴの印刷物への掲載が進められるなど、水なし印刷が大きなうねりになりつつあります。公的機関の発行する広報誌や、企業のカタログ、宣伝物などの一般商業印刷分野をはじめとし、書籍、雑誌などの出版印刷分野で、年々、水なし印刷の採用が拡大しています。特に最近では、環境先進地域の欧州において、日本発の環境に優しい技術として高く評価され、これまで適用が難しかった新聞印刷分野への展開も進んでいます。さらに、水あり印刷では印刷難易度の高いパッケージ印刷、CD/DVD印刷分野へと展開されるなど、世界的な規模で水なし印刷の普及が加速しています。