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セミナー・見学会

2005年11月10日

第9回水なし印刷セミナー見学会に130名が参加

EWPA(欧州水なし印刷協会)会長招き講演会
11月10日(木)、日本WPAではハイデルベルグ・ジャパンの協力でドイツからEWPA会長・Detlef Braun氏を招いて「第9回水なし印刷セミナー・見学会、UV印刷+新型印刷機・ハイデルベルグ?」を開催した。
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熱心に聴講する参加者と会場風景
全国から130名を越える参加者を得て、冒頭、日本WPA依田英祐会長が「日本WPAとして水なし印刷の発表会は9回目、そして全国印刷工業組合連合会水なし印刷研究会との共催では第5回目を数える水なし印刷セミナー見学会となる。開催するたびに参加者が増えている。今は市場のニーズ、行政の認識、業界の動向にいち早く対応できることが重要。変化に敏感な方の参加が増えるのは大変喜ばしいことである。」
つづいて全印工連水なし印刷研究会会長の田畠久義氏が「昨年の12月発足し水はし印刷の情報発信を行ってきた。シェアはまだ低いが環境負荷が少ない水なし印刷をMacintoshに例えてみると、優れた画期的な技術や製品をたくさん出して地歩を固めている。水なし印刷もいずれW2インキ、VOCの数値化などのアイデアや新製品を出して、印刷産業に役立てていただきたい。」とあいさつした。
その後、全印工運事務局から約1年の活動について報告があった。
「水なしUV印刷技術」Detlef Braun
EWPA(European Waterless Printing Association)会長
ブラウン氏はハンブルグ生まれ、水なし特殊印刷を1968年より30年にわたり実践し、現在、その筋の技術コンサル・指導を行う。最近は、四六全サイズの∪∨水なし印刷で、特殊印刷のみならず、一般商業印刷の水はしUV化にも取り組んでいる。
私は3社の印刷会社に就職した。東レとの緑は私が勤めたMarks 3 Zet社が1983年に東レの水はし版の代理店となり、その責任者となったことに始まる。その後1995年に独立、デュツセルドルフで印刷会社を始めた。2001年まで続け、その間ハイデルベルグGTO-DI 5色機(水なしオフセット印刷機)を購入、自分で開発した∪V水なし印刷技術で、東レの最初のCTP版を使ってプラスチックカード、ラベル、マウスパッド、OHPなどの特殊印刷、厚紙のUV印刷を始めた。2001年4月には印刷技術コンサルにすぐさま転身。ODAで中近東、
アジア諸国にも指導に行くなど水なし印刷初期の立ち上げに尽力した。
水なし印刷の特徴◆湿し水を使用しないオフセット印刷
◆水はし専用の刷版を使用
◆水なし専用のインキを使用
◆印刷機械、版面温度コントロール
◆1970年代に始まった印刷手法
ヨーロツバではなぜ水なしUV印刷を行っているのか
?ニッチな分野であること
?収益性がよく、価格が安定している
?一般方式より生産性が高い(乾燥が早く後加工へすぐ回せる。(短納期)
?単なる刷り屋でなくコンサルを行える
材料はフオイル、PET、ABS樹脂、表面加工した紙、CD-ROM、CDがふさわしい。
ヨーロッパでは水なし専用機(KBAのジー二アス・ラピーダ74G)がある。東レの代理店であるMarks 3 Zet社が水なしIRカラーを実践して水なしの普及、拡販に努めている。へルマンドルック社ではプリントマスター52にプラス431コーテイングユニットを搭載し、後づけの分離タイプのUV乾燥装置で水なしUV印刷をしている。Xラベル社では、トレント
ゲ-ベル社のフォーム印刷機械を水なし専用に使っている。
水はしUV印刷はプラスチック類など材料には高価なものをつかう場合が多い。特殊印刷向け。また、UVオフセット印刷はシェアが伸びている。作業がしやすい、パウダーもいらない、インキは1秒足らすで乾燥するのでエコ印刷と好評である。
水なしIR印刷とはフオイル印刷の新方式で、ドイツではZeller & Gmelin社がちがうタイプのインキを開発。Toracordというインキでプラスチックカード用に開発され、赤外線とホットエアーで乾燥するものでハガレなどの欠点が解消される。
水なし印刷はオフセット印刷の拡張形
私の仕事は・コンサル事業(ハイデルベルグ、KBA、MAN、テクノトランスなどの印刷機械メーカーへの印刷技術指導・枚葉、ラベル印刷工場への水なしUV印刷の訓練や指導・ローラ、インキの新製品開発・水なしIR印刷によるプラスチック印刷・水なし印刷のブロジエクト管理・研究、開発)である。
研究で生まれたのが、『印刷コントロールストリップ日 2/05』。これは、ブラン離れが悪いという水はし印刷の欠点を改善するためのブランケットのテストチャートで、ブラン離れの状態を判断するツールである。
さらに、プロジエクトの結果を発表させていただき、健全な印刷状態に近づけることも重要な仕事である。そのため、各機械における印刷版、プランケツト・着けローラ温度を決める。スピードを落して、冷風装置を着けるなどの実験を通して印刷ユニットの回転力は100%熱に変換することが分かった。その60%の熱がローラ間の接触帯に現れ、それは揺動ローラと回転ローラによるローラ間の接触帯にあり、ローラ間のインキの集まったギャップで発生し、温度は両ローラに配分されることから、揺動ローラと印刷版にはかなり相関関係があることがわかった。水なし印刷機の構造によっては、圧胴を冷やしたり、通風冷却をしないでも印刷版の温度が保てるものもあることもわかった。循環冷却水と冷却水表面の温度差は8℃あり、循環温度コントロールは必須で、しかも短期間で規定温度がかなえられるものでない
と意味がない。
私はハイデルベルグのPM52で水なしUV印刷した時、アルコール代替品で実行した。プラスチック印刷は乳化を防ぐことに苦労したが水を吸わないブラスチックには、水なしは最適
のものであった。でき上がった製品は色に力強さがあった。しかも、環境によい方式には間違いない。
私は水なし印刷は水ありオフセットにかわるものと考えず、幅広いオフセット印刷の拡張形であると理解している。従来スクリーン印刷だった仕事が水なしUV印刷に回ってきていることからみても独特のジャンルを確立してくれている。
BAT(Best Available Technology)の候補に
EU(欧州連合)は環境に対して非常に厳しい法律が今後施行されようとしている。印刷についても環境に良く、印刷生産性も良いという技術だけ、使用認可をしようとの動きが急速に
高まってきた。VOC放出基準を超えている企業は、違法とされる機運にある。
「水なし印刷」はVOCの使用量、水の使用量、VOCの放出量、そして水の放出量も少なくなる技術として印刷バイヤーの間では認められている。そのため印刷機にも環境認証制度が適用されてきていることはユーザーにとっても安心なことである。EPWAは初めてKBAのラピダに対して環境マーク付与を認めた。最近、ハイデルベルグの16色機んまる複数中間乾燥と複数印刷ユニットからなる複合機が市場に導入された背景には、今まであてがいぶちの加工された紙を印刷していたが、安い材料をつかつて紙そのものに自社で高度な紙加工を施し、それを付加価値とする傾向が強まったためで、その1つがUV印刷ともいえる。
洗浄液が非石油系のNON-VOC化へ
「水なし印刷」は水を使わないのはもちろんだが、近い将来には水なし印刷の洗浄液が限りなく水に近いものになってくれる画期的な技術要素を含んでいる。安全にして、高採算性をもたらすのが「水なしUVオフセット印刷」である。
私の希望として、ぜひ、各印刷機メーカーさんが水なし専用機を作ってほしいところだが、コールドタイプの新聞輪転でKBAがコルティナという専用機を作ってくれた。同機の東レの刷版使用量は1日、200?ほどになる。また、東洋インキが欧州で初めて紹介したハイブリッドインキは高級感があり、ヨーロッパでは人気がある。それにも増して、東レがヨーロッパでも水なし版を作ってくれることを待ち望んでいる。
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写真左から
全印工連水なし印刷研究会会長 田畠久義氏、EWPA会長 Detlef Braun氏、日本WPA会長依田英祐氏