日本WPA : Japan Waterless Printing Association

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日本WPAの活動  - 2009年5月 -

日本WPA第7期定期総会はNEW環境展の開催に合わせビッグサイトで開催

日本WPA第7期定期総会は、5月26日(火) 15:30から、東京ビッグサイト会議棟・6階610会議室で会員110名が集まり開催された。冒頭、田畠久義会長は「お陰さまで会員数180社近くとなり、中国から2社、韓国から3社、イスラエルから1社と国際的な広がりを見せるまでになってきた。今期は、drupa渡航団、web-to-print視察団、GCCLS会議と海外への見聞・研修にも積極的に出かけた。リョービ様での総会、アインズ様での工場見学会などの行事を行った。こんな中で、東レ様が国連協会のヒューマニタリアン賞を受賞、奥副会長がIWPAのボイジャー賞を受賞する快挙があった。産環協のGP新事業にわが協会の7社参画し、LCAの研さんを重ね、エコプロダクツ展ではこの内容の発表もなされた。清水宏和氏が開発された、PGGを活用し、カーボンオフセットのできる仕組みを目下構築しつつある。これは小口のカーボンオフセットを会員企業が使える道につながる。また、日印産連の進めている、PCRワーキンググループに協会の3氏が委員として参画しているが、この面での有意義なルール作りにも励みたい。」と、力強く挨拶した。第7期事業報告、収支報告、第8事業計画、第8期予算計画を審議し、原案通り満場一致で承認された。

日本WPA総会セミナー
総会セミナーには110名の方々が参加してくれた。

15:40〜16:20  セミナー1「中国トップクラスの印刷品質獲得の実践体験談」 
雅昌企業有限公司・北京在住・辻隆生様
氏の弟子筋にあたる方が、一念発起して興した会社が今や、北京オリンピックのポスターを一手に受注した中国を代表す会社にまで成長した。印刷製版技術の練磨、管理と徹底は言うに及ばず、古書・古美術品のオークションを運営する部門が当たり、高品質美術印刷と相まって、成長をはかっている。水なしFM15μを実践しているが、中国での半単価は高く、その解消を訴えておられた。

16:20〜16:45  セミナー2「新開発・印刷物製造のCO2計算ソフトPrinting Goes Green」
清水印刷紙工株式会社・社長・清水和宏氏
産環協のGP採択企業となり、印刷を行う上でのLCAを研鑽された。200社近くで印刷界ではただ1社のクリティカル・レビューを受けた会社となった。氏の作ったLCA簡易計算ソフトは、そのロジックがしっかりしているとの定評を得て、この度、日本WPAと日本カーボンオフセットとのカーボンオフセット事業の提携運営にあたり、このPGGのロジックを使うことが条件ともなっている。この計算ソフトの内容、使いこなし方を解説された。
「クロスメディアDMの反応」
日本WPA・事務局長・五百旗頭忠男
日本WPAはNEW環境展2009に合わせ、展示会の来場勧誘と水なし印刷・バタフライロゴの一層の認知のためのダイレクトメール5300通を、上場会社を中心にDMした。結果については次のサイトで詳細が述べられているが、その解説を行った。
講演の部は熱が入り、時間を15分延長してしまった。

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ボイジャー賞を手にして挨拶する副会長・奥継雄氏

懇親会
最上階のレストラン・トレヴィに移り、17:30から懇親会を開催した。この場で冒頭、2月にシカゴで開催されたGCCLS会議で水なし印刷の普及に長年貢献された実績をもとに、奥副会長にボイジャー賞が贈られたが、改めてこの場で田畠会長から奥副会長に記念のランプが手渡された。挨拶に立った奥継雄副会長は、この受賞を励みに、今後も、バタフライロゴを需要家筋へ一層の認知の働きかけを進めたいと意気込みを強調した。会員同士、互いの持てる情報交換と懇親に努め、20:00に散会した。

2009年5月29日

日本WPA第7回総会に関するお知らせ

表記総会の開催にあたり、会場が変更になります。

旧:610会議室
新:605会議室

また、新型インフルエンザに関する案内が発表されておりますので
以下のサイトにアクセスしてご確認をお願いいたします。

http://www.nippo.co.jp/n-expo009/

2009年5月19日

CO2排出量「見える化」と課題 田端久義会長が提言

印刷専門月刊雑誌「印刷界」、2009年5月号に田端久義会長の提言録が掲載された。本内容はその転載である。

水なし印刷を軸に排出量削減ヘ 精度の高い算出を効率的に実現

田畠久義
日本水なし印刷協会 会長
日印産連カーボンフットプリント準備委員会 委員

業界に先駆けて環境保全へ取り組んできた日本WPA(日本水なし印刷協会、田畠久義会長・蟲弃票匱卍后砲郎鯒よりカーボンフットプリント研究会を発足し、CO2排出量の算出について調査・研究を進めている。昨今、さまざまな分野でCO2排出量の「見える化」が注目を集めるなか、印刷業界でも環境負荷に関するデータを開示する取り組みが広がりつつある。CO2排出量の増減のみにとらわれるのではなく、総合的に環境負荷を考えていくことが重要である。日本WPAのこれまでの研究成果やカーボンフットプリントから見る印刷業界について田畠会長に話を聞いた。

水なし印刷の視点からCFPを調査・検証ヘ
2008年6月に福田ビジョン「『低炭素社会・日本』をめざして」が公表され、印刷業界でもCO2排出量の算出に向けて動きが⊇凧に活発化した。そのようななかで、昨年の夏、(社)産業環境管理協会から要請があり、製品グリーンパフオーマンス高度化推進事業に日本WPAから弊社を含む7社が参加することになった。
 さらに、日本WPAでは研究会を発足させ、適性やカーボンフットプリントとCO2削減印刷などを紹介した。
 弊社には四六全版の同機種の印刷機が2台あるため、B5カラーチラシ一万部を水なしと水ありでそれぞれ印刷する実験を行い、環境への負荷を工程ごとに明確化した。その結果、今回の実験では、紙の製造段階を除く印刷時のCO2排出量は、版の製造でおよそ全休の4分の3を占め、次にインキ製造、印刷工程と続いた。しかし、印刷部数をはじめ、さまざまな条件で排出量は変化する。

CO2排出量だけでなく総合的に負荷低減を図る
環境負荷は単純に排出量だけで判断できるものではない。例えば、グラビア印刷で設置されているVOC回収装置は、その装置自体の製造や運転に資源や電力を使う。しかし、VOCの排出は規制されているものであり、回収装置は大気汚染を防ぎ、環境負荷を低減するために矢かせない。エネルギーやコストをかけるからこそ環境への負荷が低減されるものもある。環境を保全するために使うべきエネルギーがある。それは必要最低限のCO2排出であるといえる。CO2排出量だけで環境負荷低減を図るのではなく、総合的な観点から把握することが重要である。
 カーボンフットプリントに取り組むにあたり、オフ輪、パッケージ印刷、商業印刷では当然、立場もとるべき対策も変わってくる。よって、日本WPAではカーボンフョトプリント研究会のなかに商印オフセット印刷部会を設置した。現在、2次データの入手先や算定範囲(バウンダリ)など日本WPAのなかで一定の共通ルールを作り、より精度の高い算出方法を確立している。やはり1社だけでしか通用しない基準では信頼性も薄い。
 日本WPAではLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点で、できる限り実際に計測した正確な数値を出すことを趣旨としている。排出量の具体的な計算方法などは経産省や日印産通での動向を見ながら日本WPAのなかで今後も取り組んでいく課題のひとつである。

LCAの観点を基本として精度の高い算出方法を検証
弊社は、現段階では実際の印刷時に排出量を計測しているため、事前に排出量を想定してその印刷物に排出量の正確な数値を表示することはできない。しかし、今後データが蓄積され、関数ができれば、印刷物にある程度正確な数値を表示することも可能となる。
 実際に経産省や日印産連でPCR(商品種別算定基準)が策定されると、細部にまでわたらず、大まかな基準になる可能性もある。
万一、部数やページ数だけで排出量を算出するようになってしまったのでは、それは正確な数値とは決していえないだろう。印刷機のメーカーや機種ごとに特性があり、実際の数値も変わってくる。精度を求めるばかりに、計測が企業の重い負担となってはいけないが、一度は実際に計測してみてもいいのではないか。実験をして初めて明らかになることもある。
 印刷機の使用電力は計測器を設置することで可能ではあるが、紙やインキの排出量は2次データに頼らざるをえないため、その2次データの信頼性も重要だ。さらに使用・維持管理段階や廃棄・リサイクル段階などは予測のつかない部分も大きい。
 本年3月に、有識者による「CO2排出量の算定・表示・評価に関するルール検討会」においてカーボンフットプリントの指針が出されたが、それによると、LCAの手法を活用し、原料調達から廃棄・リサイクルに至る商品のライフサイクル全体を通して算定すべきとされ、排出量は一販売単位を絶対量で表示するよう記されている。最近、有利な部分のみを取り出してCO2排出量を算出するものや、他の製品や従来の製造方法と排出量を比較して、マイナス表示や削減率表示をしているものが見受けられるが、カーボンフットプリントの今後の方向性ではない。

排出権取引市場の将来性 マイナス6%実現へ向けて
日印産連ではカーボンフットプリント準備委員会を設置し、試行PCR策定自主ワーキンググループも発足した。同ワーキンググループは経産省が発案したもので、PCRを策定するのが目的。印刷関連では印刷と梱包資材のグループがある。実際にPCRの運用を検討するのがカーボンフットプリント準備委員会となっている。
業界でPCRの策定を進めていくなかで、算定範囲やカットオフ基準、アロケーション(配分)など、どのレベルまでを含めるのかを見極めることが難しい。印刷では使用・維持管理段階での排出はなく、範囲外とされるのが一般的だが、逆に他の業界には使用時に排出量が多いものもある。業界によってさまざまだ。これから細かなシナリオの策定が進められるが、あまりに大まかな基準であっては数値の信頼性にも疑問が残ってしまう。
また、現在、日本には排出権取引の市場がない。よって、排出権は外国から買わなければならない。今回の排出量の算定は、将来実現するであろう、排出量の企業闇取引を見込んでいるともいえる。国内市場をつくり、日本の資金が国内の環境改善のために使われるシステムに変えなければならない。また、排出権取引に限らず、測定データはさまざまな分野で活用できる。
弊社ではグリーン電力証書システムをカーボンオフセットに利用している。グリーン電力証書システムとは、自然エネルギーによって発電された電力のCO2削減や化石燃料削減といった環境付加価値を具現化し、自主的に省エネルギーや環境対策に利用できるようにしたもの。風力、太陽光、バイオマスなど、どのグリーン電力を使うかを選べる。京都議定書の削減目標を達成するにはこのような事業がどこまで成功するかが鍵になる。
さらに、弊社では排出量を抑える「カーボンオフセット設計」を推奨している。用紙削減として損紙の少ない水なし印刷の採用や用紙を薄くすることでCO2排出量の削減が可能になる。また、電気消費量削減のために両面印刷の採用やインキ消費量を減らすために高精細印刷を用いるなど対策を実施している。今、顧客のほとんどは価格を基準にサービスを選んでいるが、将来、新しい基準としてCO2排出量で選ぶようになるかもしれない。

排出量の「見える化」は企業にも有効なツール
 カーボンフットプリントはJIS、ISO化か予定されている。テクニカルスペツク範囲でのJIS化か2010年頃。2011年には正式にJIS化、ISO化されると言われており、ISO化に向けて20カ国が参加している。それにあたり日本の立場を明確にし、主導権をとっていくためにも、今、急速に準備が進められている。将来、マークを使用するにはISO認証の取得が必要となる。カーボンフットプリントがどこまで一般的なものになるかは、まだ未知数だ。
 カーボンフットプリントは消費者が同種の製品のなかから、より低炭素なものを選んで購入できるようにすることが目的のひとつだが、一概にCO2排出量が少ないものが環境負荷も低いわけではない。むしろ、排出量の「見える化」は企業側にとって排出権取引の前哨戦であり、排出量の少ない製品作りを推進し、さらなる削減のためのツールである。
それぞれの製造段階での排出量が明らかになり、課題も見えてくるだろう。排出量削減へ犬きくつながることが期待できる。確かに、カーボンフョトプリントが普及することは意義のあることではあるが、どの企業も簡単に表示ができるのでは信憑性が薄く、混乱を招く。統一ルールのもとで、正確な数値が表示されるシステムにしなくてはならない。

これまでの研究成果を業界に伝えていく意義
 日本WPAは、産業環境管理協会の指導のもと、今後もより精度の高い算定を効率的にできる方法を打ち出し、差別化を図っていく考えである。水なし印刷のなかで、いかにCO2排出量を減らせるかを研究していかなければならない。環境対応の印刷を早くから打ち出してきた日本WPAとして、これまでの成果を業界に反映させていきたい。

2009年5月18日

WATERLESS CUTRRENT2009年5月号を送信

今月号は、米国の印刷関係の法規制で本を出されている、フレッド・シャピロ氏の湿し水
に使われる、化学薬品についての記述がなされている。
IPAに代わる表面張力を切る代替え品を投入しても、代替え品そのものが米国の大気浄化
法に適用される物質であることが指摘されている。水なしの生産方式の環境優位性はこの面からも優位と言える。

環境利点を知っていただく
水なし印刷技術は湿しシステムと、これと関連する主要な化学物質を排除してくれる。
これらの化学物質を除去することで、より品質を上げ、そして、生産性を高め、さらに、人、環境、公衆を薬害から守る有益な印刷工程となる。
湿しシステムでは版にインクを盛る前に、水が与えられている。これは、非画像部にはインクを受けつけないように、潤し続けているからだ。非画線部での、水で濡れを良くするために、湿し液にはアルコール、グリコールまたはガムを入れて表面張力を切っている。
インキを引き付ける、受容性を持つ領域の画像部では、これら添加剤を吸収しない。
湿し液に添加する濃縮の薬液は、湿し濃縮液、湿しエッチとか、単にエッチ液と呼ばれている。
エッチ液には、通常、感度を減らすために、アラビアゴムまたは合成ゴムを含んでいる。
ゴムは酸性の条件のもとで効能が上がるので、ほとんどの湿し水は酸性(PH4-5)に調合されている。ゴムが版のアルミ酸化物の表面に反応して、つくことを思い出されたい

湿し水に含まれる化学物質には
1)版との反応を防ぐ腐食防止剤
2)pH緩衝剤、IPAとかその代替品などの湿潤剤
3)湿しシステム内でカビ、真菌類とかバクテリアの増殖を抑える防カビ剤
4)湿し水の流れを容易にする消泡剤
ある種の濃縮の薬液には水だけでなく、さらにアルコール追加する必要が生じる。
水は湿し液の主要成分である。
それは印刷機で使用される湿し液の75%から95%を占めていると言えよう。この湿し水の効能は水道水に依存する。水道水の自然なpHとは、水源から浄化時にpH調節の処置を受けている。
蒸留水とかイオン化水は、一貫した性能を保証するために使われている。
版の濡れ特性は湿し水の表面張力に依存してくれる。表面張力はゴム(表面活性剤)とアルコール(補助界面活性剤)の両方によって切れる。アルコールは、また、湿し水の粘度を増加させ、より厚い層の湿し水が版の非画像部に行き渡るのを助ける。
アルコールは水より速く気化するので、紙にはより少ない湿し水しか到達しない。アルコールは湿し水によるインキの乳化を減らしてくれる。
アルコール代替品で版を濡らすことをして、大気汚染につながる環境問題を和らげようと考える。グリコールははるかに高い沸点を持っていて、オフセット版の主流に使われているIPAより気化しにくい。
目的達成のため化学物質を排除しようとするが、この代替品は、EPA Method24試験で言う揮発性有機化合物(VOC)の範疇に分類されている。
また、エチレン・グリコールは危険な大気汚染物質(HAP)として大気浄化法では分類されている。他方、水なし印刷技術は湿し液の必要性を排除している。
つまり、紙へ画像を印刷するのに必要とする化学物質の量を減少させることにより、持続可能の概念を具体的に発展させるものだ。
公衆への影響と地理的なエコロジー規制領域を狭めてくれることになる。(米国では都市部での化学物質使用の規制強化が図られていて、オフセット印刷会社は規制のない地方部へ移動している。)
印刷会社が高い水準の印刷品質を達成し、廃棄物割合を低め、生産力を高めることを同時にこなせるのだ。水なし技術は印刷会社にウイン・ウインのビジネス関係と、コミュニティへの責任を提供してくれる。

2009年5月 4日

全印工連水なし印刷研究会のセミナーのご案内

全印工連水なし印刷研究会では、日本WPA との共催により、水なしFM15μ をからめた
中国トップクラスの実践体験報告ならびに新しく開発された印刷物製造向けCO2 計算ソ
フトPrinting Goes Green の紹介、このソフトを使った圧着パンフとWeb とのクロスメデ
ィア・ダイレクメールのセミナーおよび懇親会を下記の要領で開催いたします。
繁忙の折ではございますが、是非とも、この機会に水なし印刷セミナーにご参加いただ
きたく、ご案内申しあげます。
◆日時:平成21 年5月26 日(火)
セミナー:15:40〜16:45 懇親会:17:00〜19:00
◆会場:東京ビッグサイト 会議棟610 会議室
<URL> http://www.bigsight.jp/general/access/index.html
※懇親会場:会議棟最上階「リストランテ・トレヴィ」
※東ホールでは、「NEW 環境展」開催中。(開催期間:5/26〜5/29)
◆セミナー:「中国トップクラスの印刷品質獲得の実践体験談」
<講師>雅昌企業有限公司・北京在住・辻隆生様
「新開発・印刷物製造のCO2 計算ソフトPrinting Goes Green とクロス
メディアDM の反応」
<講師>清水印刷紙工株式会社・社長・清水和宏氏
日本WPA・事務局長・五百旗頭忠男
◆参 加 費:・セミナー:お1人様に限り無料。(2人目からは1人3,000 円)
・懇 親 会:1人3,000 円 ※当日、徴収させていただきます
◆申込:お申し込みは添付のpdfの下欄にご記入の上、ファクシミリで日本WPA(水なし印刷協
会)事務局(03-5976-8030)宛お送り下さい。
◆問い合わせ先:全日本印刷工業組合連合会 電話03-3552-4571

セミナー案内(090526東京ビッグサイト).pdf

2009年5月 1日

プリテックステージ5月号に事務局長の講演録が掲載される

以下、掲載された内容を転載させていただく。

印刷ネット通販の時代は来るか
米国の成功現場を見る

日本WPA(日本水なし印刷協会)
事務局長 五百旗頭 忠男

 印刷ネット通販のマーケットが拡大している。4月6日、東京都千代田区の如水会館で、第43回竹橋プリンティングセンターコミュニティスクエア交流会で日本WPA(日本水なし印刷協会)事務局長の五百旗頭忠男氏が「印刷ネット通販の時代は来るか?−米国の成功現場を見る」を演題にアメリカ印刷会社の印刷ネット通販成功事例を解説した。本稿ではその要旨を紹介する。
(文責・編集部)

Web to Print=印刷ネット通販
昨年の10月26日、米国の印刷通販ネットの会社を訪問しました。印刷ネット通販は日本とアメリカで意味合いが違います。現地に行った昨年秋から金融危機が起こり、社会情勢が激変しました。しかし印刷ネット通販の流れは基本的にずっと続いているものとしてお話します。
Web to Printは正確に言えば印刷ネット通販だけではないのでしょうが、ネットを使ってデータをサーバーにためて印刷物を制作していく手法も指します。一般的にアメリカではWeb to Printを扱った印刷物といえばネット通販を指しています。私個人としても印刷ネット通販と捉えています。

印刷ネット通販の変遷
2000年にe-コマースが流行しました。2000年のdrupaの時に多くのソフト会社が参入してきましたが、時を経るにつれて次第に淘汰されていきました。アメリカではe-コマースで印刷環境が変化したという一般的な認識があり、新たなビジネスモデルとなっています。
ネット通販を簡潔に説明しますと、印刷物の受発注をインターネット上で完結する仕組みです。従来の購買と管理方式を変えた革新的な手法と言えます。どの範囲を扱うかで、サイトの内容が違ってきます。日本ではB to Bが一般的なサイトです。名刺・年賀状の分野では、B to Cが存在し、日本の場合、デジタル印刷機で処理しています。
本日紹介するPrintFullfilmentServiceと言う会社の語源は、全印工連で推奨している「ワンストップサービス」と同じ意味合いです。同社は印刷工程をキーレス・アニロックス・水なし印刷機でこなしています。PrintFullfilmentService.comはOvernightPrint.comの子会社の印刷会社です。このブランド、OvernightPrintという名前でネット通販サイトを開設しています。年商150億円の全米第2位の印刷ネット通販サイトです。第1位はビスタプリントで年商450億円です。アメリカではネットで商売している印刷会社に勢いがあります。B to Bもありますが、目立っているのが、B to Cです。年商450億円と年商150億円の会社があるわけですから当然です。
OvernightPrint.comの意味は日本語で「アサッテクル印刷」と言えます。アスクルという会社は「明日来るから」アスクルと言いますが、Overnightとは「日をまたがる、48時間」という意味です。印刷のプロではなく、町の小企業を相手に印刷の直接受注をして受けています。
OvernightPrint.comは4年間で年商150億円に成長しました。驚異的な伸びです。同社は年率30%で伸びています。
昨年は、英国、独、仏、オーストリア、ロシア、ポーランド、アイスランドにサイトを開設しました。今年、イタリア、スペインにサイトを開設します。多くの国々にサイトを出す理由は関税の問題です。例えばアメリカのサイトにアクセスして注文し印刷物を頼んだ場合、アメリカから直送して日本で受け取るとアメリカ製となり関税がかかります。ところが、仮に日本にOvernightがサイトを立ち上げていたら、アメリカで加工しても委託加工ですから、関税が掛かりません。特にヨーロッパ、カナダ、メキシコなど国別にサイトを上げていなければアメリカにアクセスすると関税を払わなければならないためにコスト増となります。
このサイトは多言語対応で何語でも対応できるようになっています。我々の関心は日本にいつ出て来るのかということです。いずれは進出する考えを持っているようですが、中国が先と考えているようです。
OvernightPrintのサイトはフラッシュ上で動く、独自のDTPソフトのおかげですいすいと印刷物を制作できます。また豊富なテンプレートが上がっています。驚くことはトヨタ、ホンダなどロゴマークまでテンプレート化していることです。これら代理店の依頼によりロゴの利用が可能になっています。
入稿した原稿は自動面付けソフトで自動面付けします。独自の簡易校正をダウンロードして使えますが、ソフトプルーフ校正です。

34歳の若手経営者が創業
経営者のブレッドド・ヒープ氏は34歳の若さです。カリフォルニア大学で電子工学を学び、シリコンバレーで修行した後、ソフトウェア会社       「Farheap Solutions」を創業しました。ある時、印刷会社から印刷ネット通販サイトの構築を頼まれてソフトを開発しました。ところが引渡しのときに金銭問題が起こった。印刷会社からは「最初に提示した金額と違う」とクレームがきました。同社は「当初のスペックを尊重するとこの金額になる」と言い張ったのです。ブレット・ヒープ氏は「印刷会社は何もわかっていない」と気付き「印刷会社に売らないで独力でサイトを開く」と自らサイトを立ち上げました。このビジネスが4年のうちに年商150億円に化けました。日本では考えられないことです。
ヒープ氏は去年、印刷プロの経営者、デール・フォード氏を採用しました。とにかくやることが早いことが特徴です。デール・フォード氏は2007年9月のIGAS展で日本WPAが開催した国際水なし印刷セミナーで、54歳のモザイク社社長として全米1の水なし印刷成功事例を披露して、講演した人物です。IGAS展示会場でブレッド・ヒープ氏が来場し、フォード氏と偶然会い、自社に引き抜きます。そしてサイト専門の印刷会社の  PrintFullfilmentService.comを作りました。
翌月の8月にフォード氏はライプツィヒに工場の建設にあたりました。ルイビルにはアメリカの高速便UPS(日本の郵パックにあたる)の本拠地があります。そしてカリフォルニア、ラスベガスにあった工場をルイビルに集結してしまいました。

Google Matrixがポイント
 OvernightPrint.comのサイトの通販価格は、名刺100枚カラーで9ドル95セントです。スポットニス込みの価格で受注しています。彼らと議論するとGoogle Matrix(グーグルマトリックス)がポイントだと言います。同社はグーグルの検索サイト広告に1億円を費やし、3年間で採算分岐点に到達しました。私は「グーグルの検索広告よりも営業マンに仕事をとらせたほうがよいのではないか」と意見しました。彼らは「営業マンは固定費。我々の広告費は変動費です」と言い張るのです。営業マンなしで、いかに使い勝手のよいサイトを構築していくかが営業の生命線と述べています。ブレッド・ヒープ氏はソフト屋出身でありっソフトのバックアップに120名のソフト技術者が控えさせています。
日本ではSEO(インターネットで検索した時に検索項目で上位になるようにすること)を上げると伊井ますが、彼らの場合、グーグルマトリックスをマスターすれば自然に検索で上位に来るという考えを持っています。アメリカではグーグルマトリックスを学問として教えています。
本社はケンタッキー州ルイビルにあります。ルイビルにはかつて、楓の木があり、野球のバットをつくっていたということで野球博物館があります。ルイビルはUPSの貿易中継地点で夜中の1時に荷物を最終便に乗せられ、明くる日の10時に全米90%に配達されます。仮にシカゴで発送する場合、締切が10時になり、3時間の差が出ます。ネット通販ができた要因のひとつに物流の発達が大きい要因です。中継地点に印刷拠点を持ってくると効果があるといえます。

ITと印刷技術の融合
PrintFullfilmentService社はITと印刷技術をうまく融合しています。B to Cの場合、デジタル印刷機を使用していると思われがちですが、水なし印刷機を使っているのがみそです。日本には入っていませんが、DI水なし印刷機で菊半裁機の「Karat74DI」が4台、さらにDI印刷機を4台、菊全8色機を2台増設します。
水なしキーレス・アニロックスDI機にしている理由は、デジタル印刷機と違い、クリックチャージを取られない優位さが出ます。
KBA社の74DIはアニックスローラーを使用していて、印刷機上でイメージングします。立ち上げの損紙が10枚ほどで済みます。
日本でDI機はあまり評価されませんでした。 CTPがこれだけ普及し、印刷機械の上で製版しなくてもよいのではないかと考えられています。着けローラーは版胴と同径の一本ですから、濃度差が出ません。同社の8台の印刷機械は、どの台で刷ってもカラーマッチングが取れています。カラー調整は、すべて製版でやるという考えです。インクが色相に合っていなければカラーマッチングをとれませんので、インクが重要なポイントになってきます。
同社はクリックチャージをとられるためデジタル印刷機を使いません。面付けしても、売上が上がるに従って、クリックチャージが取られていくと、印刷会社として商売にならないと考えています。その点、印刷機は売上が上がれば上がるほど自分達の利益が増えます。
同社は、自社で開発した自動面付けソフトを運用し、「グラブフローインキング」を使用し、キーレスで、インクのツボキーがなく、標準濃度で印刷するため、校正紙はありません。
どの台で刷ってもカラーマッチングしているため、付け合わせ印刷ができます。どの台で刷っても同じ仕上がりで上がります。
また同社は月一回、チャートの印刷で管理し、インキの色相検査で受取検査をしています。
なぜ同社はイメージングに10分間もロスするDI印刷機を設置しているのかという疑問があります。この10分間で印刷物の両面検品をオペレーターにさせています。伝票なしの画面上でのワークフローとなっています。
PrintFullfilmentServiceは、DIを重視しています。理由は小ロット、急ぎの仕事に対応できるからです。

印刷ネット通販のワークフロー
同社は建物の倉庫を改造し、印刷工場を作り、空調装置、加湿装置を入れています。温度、湿度を刻々と点検しています。水なし印刷のポイントは温度、湿度管理を欠かさないことです。データを取ることで、スムーズに管理できます。
原価管理は、受注した品番ごと、お客様ごとのリストがあります。印刷通販を扱っているので、名刺だけということはありません。お客様は封筒、ノートパットなどを混合して注文します。あるものは早く、一方遅いものもあるので、管理しなければなりません。そこで「中間倉庫」を作っています。
中間倉庫は、工場にカメラを置いて、コンベアーで流れている品物が正常に流れているかをチェックしています。これらのソフトは全て自社で開発しています。
またサーバーは30秒ダウンするとバックアップがすぐ働いて立ち上がります。サーバーがダウンしていると仕事ができないので、重点的に投資して整備しています。
印刷ネット通販は、お店と変わりません。エプソンヘッドをつけた自社商品にTシャツを作るインキジェットプリンターを入れています。また桜井グラフィックシステムズのシルクスクリーン印刷機でIRとUVをつけたもので、乾燥しています。シルクスクリーンもCTPで製版しています。
印刷された用紙は名刺、はがきをスリッター加工し短冊にして、断裁機にかけます。スリッターと断裁機械の方が断裁精度が出てくれます。
日本の加工機械が多く導入されており、印刷機械はKBA社ですが、伊藤鉄工の断裁機、折機は正栄機械製作所のオリスター機を使っています。用紙は王子製紙のトップコートを使用し、名刺の角丸印刷機も入れています。
製品は一時的に、2階の中間倉庫で保管されます。注文が揃った段階で出荷されるわけですが、バーコードで管理し、混入を防いでいます。私は損紙はどのくらいか?と質問したところ「2.5%ある」という答えでした。刷り直して、流れの中に入れて作りなおした方が安いという考え方です。大阪で印刷ネット通販をされている方が参加されたのですが、「2.5%より当社の損紙は少ないのですが、0.5%に留めようとすると管理コストが莫大にかかってくる。このやり方は優れているのかもしれない」とおっしゃっていました。

 OvernightPrint社は、印刷ネット通販を巨大なビジネスに成長させました。印刷ネット通販の成長には若手経営者のソフト・システム開発能力だけでなく、デジタル印刷機を使わない、物流の貿易地点に本社を持ってくるなど、今までにないやり方で、4年間で年商150億円を達成しています。日本の企業でそのまま同社のビジネスモデルをそのまま取り入れるのは困難ですが、取り入れられる部分は大いにあると思います。
ワークシェアリング、国内需要喚起と今までと違う経済の仕組みの構築を求められていますが、新時代はB2Cネット通販を助長すると思います。

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