日本WPA : Japan Waterless Printing Association

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日本WPAの活動  - 2008年3月 -

Waterless Current2008年4月号を送信

以下はWaterless Current2008年4月号の巻頭記事である

米国の新しいスモッグ規制
合衆国環境保護庁(EPA)によって提案された新しいスモッグ規制法により水なし印刷は拡大できる一方、米国と他の国とのギャップを近づけるかもしれない。EPAの概要の規則法では、空気中の許容できるスモッグの水準は、現在の規格85ppb(10億分の85) から、75ppbへと低下したが、小児科医や環境保護団体が薦める、子供と年配者の保護の値、60ppbより高くなっている。
スモッグとは大気での日光、窒素酸化物、および揮発性有機化合物(VOCs)の化学反応と定義されて、地表面ではオゾンを、空中では浮遊微小粒子をもたらす。地表面のオゾンは人の健康と環境に多くの危険性をもたらすとされている。
規格が強化されると、工場、車、トラック、および電気事業のような、スモック要素の排出者に対し、行政とか第3者の監視機関が一層力を発揮してこよう。新しい規制のもと、米国では700以上の地域でモニター検査がされているが、345の地域が違反(非到達地域)となる。今の規則を達成できない地域として、85の非到達地域があるが、この数字の4倍となる。地域間での問題の厳しさによって、新しい規則への移行の差を設け、2013年から2030年の間としている。
政府機関がVOC減少を追求してくるので、米国の印刷会社はその厳密な精査対象となろう。
多分、それはPresstekとか東レの水なし印刷技術を採用することに、より近づくことを意味するだろう。しかし、抵抗運動がでてくる。

revised_standard_075.jpg
8時間・オゾン75ppb基準違反地域
赤は違反地域
黄色は75ppbで基準内地域
青は75ppbを下回る基準内地域

ここ数週間、電気事業、化学、および石油系の会社を代表する産業グループが、一生懸命、合衆国の規格の変更に反対の運動をしている。彼らは、EPA(環境保護庁)、ホワイトハウス(大統領府)、および議会に対し、現在の要件を下げると、コスト高を招き、新しい公害防止を課す地域の経済そのものを脅かすと主張している。彼らは、スモッグ規格を下げることでの健康への優位さがまだ立証されていないと主張している。
その間、EPA顧問団の科学者は、60〜70ppbのオゾン規格を採用するよう政府機関に促し、それが呼吸障害を抱える何百万人もの人々に保護への適切な限界を提供するのに必要であると主張する。
同様の結論は子供の健康に関する第2諮問会議からも出てきた。EPAの行政官、Stephen Johnsonは、現在の大気保全基準が十分でないと一貫して示している。
昨年、議会で証言したが、彼は、地表面のオゾン、または「スモッグ」を1,700か所の研究により、「オゾンの影響は我々が以前に思ったより健康被害の面で重要である」、としている。
政府機関は、新しいスモッグ規格により、毎年、最大限で2,300名の若年死、890名の心臓発作、1,900名の救急駆け込みを防げると言う。

2008年3月31日

Yano Report 2008.3.25 〜水なし印刷の現状 Pa r t2~

Part1(3/10号)では日本WPAと東レの取り組みを中心に、水なし印刷を取り巻く状況を紹介した。この号では、実際に業務を行っている日本WPA会員の印刷会社の取り組みを紹介する。

久栄社

水なし印刷効果で売上増
80年代より全台水なし専用設備整える

久栄社は、1930年創業以来カラーオフセット印刷において、企画デザインから製版、印刷、加工、発送まで印刷の全てのプロセスを自社グループ内で一貫して行っている印刷会社である。
水なし印刷の導入は、1986年に前社長(現会長)の指導のもと行われた。導入当時から全台を水なし印刷機仕様に替えるという抜本的な改革を行った。これには、スキルレス、高品質といった仕事に直結した水なし印刷の利点を活かしたいという意図があった。もう一方の環境面という部分には注目していなかったという。当初は新しい印刷方式であったため、製版様式が合わなかったり、印刷トラブルが多発したりと苦労したが、その試行錯誤の中で、環境面での利点に気づき、独自でマークを作成し、営業を行った。90年代に入り、アメリカでWPAが創設され、日本でもにわかに水なし印刷が注目され始めた中で、東レからWPAの紹介を受け、2000年にはWPAに加盟する。2002年には日本WPA設立に貢献する。また水性ノンVOCをサカタインクスと共同開発し、国内印刷会社の中で3番目の早さでFSC森林認証も取得した。現在は、水なし印刷、大豆油・ノンVOCインキ、FSC認証用紙の3点セットで、「環境対応印刷」を売りに営業活動を行い、売上を伸ばしている。
2007年度(2007年11月期)の売上高は、33億5,200万円で、そのうち印刷業での売上は約9割を占める。水なし印刷の売上高は約16億円で、印刷業全体の売上の約53%を占める。2006年度(2006年11月期)の売上高は32億5,600万円、水なし印刷の売上高は約15億円であり、前年同期比は全社売上で2.9%増、水なし印刷の売上で6.6%増とともに増収している。水なし印刷の需要増が全体の売上増に貢献している。水なし印刷における営業体制は、専用の新規開拓部隊が東京本社に2チームあり、1チームあたり4〜5人体制となっている。既存の取引先には営業部の各担当が対応している。水なし印刷設備は千葉第一工場にあり、枚葉印刷機が4台入っている。同社の設備は、枚葉印刷機のみであり、他の印刷方式の仕事や容量オーバーの場合は、外注している。今後は、08年5月に菊全判の1色機を導入し、単色モノの印刷効率を上げる構想を持っており、また6月には、老朽化に伴い四六全判を入れ替える予定である。
受注している印刷物は、IR関係のパンフレットや環境報告書が主で、民間企業のほかに官公庁の仕事も請け負う。ただ、官公庁の入札資格はグリーン購入法が基準となる。そのため、水なし印刷の利点を活かし切れない(水あり印刷でもその対象項目はクリアできる)面もある。映画関連の印刷物は、全社の売上で約3割を占め、水なし印刷の品目別売上推移では42%増だが、これはあくまでも全台水なし専用機である社内で印刷されているということであり、現状は、顧客からの水なし印刷指定(バタフライマークの使用要望)はほとんどない。最終ユーザーに捨てられにくいという特性上、制作時には「丈夫」「劣化しにくい」ということに焦点が当てられていると思われる。
SP関連の印刷物は、種類、量が多く、顧客側も数社に発注しているケースがほとんどであり、バタフライマークを統一して付けられないという点から、なかなか水なし印刷の需要が高まってこない。発注価格の整合性や古くからの取引関係による信頼感などから、顧客が発注先を代えることは容易ではない。それよりも、水なし印刷を普及させることが、受注品目の幅を広げると考えられる。
顧客を業種別に見ると、製造業が58%と半数以上を占める。近年は、この製造業での水なし印刷需要が伸びてきている。主に電機メーカーや自動車メーカーなど。サービス業ではまだ需要は少ない。あくまでも同社は、環境対応印刷を押し付けるのではなく、ニーズに対応する姿勢で営業活動をし、今後は需要が増えているIR関係のパンフレットや環境報告書での受注量を増やしていく方針である。
印刷資材については、水なし版は東レの各種を使用している。今後は、07年9月のIGAS2007で出展されていた水なしケミカルCTP版「INNOVA(イノーバ)」に注目していく。この版をPRしていくことによって水なし印刷の環境保全への貢献度のPRにつながると考えている。インキはサカタインクスの「ダイアトーン水無しエコピュアSOY」と東洋インキ製造の「アクワレスエコーネオ」、大日本インキ化学工業の水なし専用インキを使用している。2002年にサカタインクスと共同開発した鉱物油を含まない100%植物油配合の水性ノンVOCインキ「ダイアトーン水無しエコピュアSOY CL」の使用量は、同社が使用している大豆インキの10〜15%とまだ少ない。環境対応印刷をさらに追及するにあたって、このインキの使用量を増やすことが課題とも言える。
現在、印刷物を制作する過程に対応した認定マークが多いが、同社は、今後印刷物の後処理についても環境に対応していく必要があると考えている。印刷物は古紙として再生されるが、その品質ランクが印刷物を一目見ただけで分かるマークの提案を進めており、印刷産業の環境対応への新たな方向を探っている。
同社は、環境に対する社会的意識の高まりを背景に、水なし印刷のニーズは今後もさらに増えると考えている。そのニーズをしっかりと掴み、受注につなげる戦略をたてる一方で、環境対応印刷と並び、新たな柱として「色覚ユニバーサルデザイン」を加えていく。現在、色覚障害(色覚不足)者は男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合と言われている。日常生活で支障をきたすということもないため、自覚している人は少ないようだ。この割合を見るとその必要性は十分あると思われる。具体的には、自社、他社問わず制作された印刷デザインを同社所有の「色覚ユニバーサルデザイン」対応設備を使い、誰にでも見やすい、正確な情報を得られる印刷デザインになっているかを検討し、チェックを通った印刷デザインには、同社独自のマークを付けて認定する。この「色覚ユニバーサルデザイン」を加えることによって、同社の進めている環境対応印刷と合わせて社会環境、自然環境の双方に配慮した印刷物の提供を実現する。これにより更なる拡販を目指すとともに、環境対応型印刷会社として、他社との差別化を図っていく方針である。


水なし印刷の現状についての
まとめとその展望

昨今の環境に対する社会的意識の高まりにより、顧客側からの水なし印刷のニーズは確実に増えている。サーマルCTP化が進み、刷版時における調子再現性が上がったことにより、水なし印刷の品質が受け入れられ易くなったということも要因の1つにある。しかし、その用途はIR関係や環境報告書などまだまだ限定的であり、今後、バタフライマークの使用を他の品目に広げることが更なる普及につながると考えられる。
水なし印刷の導入ペースは、需要があるにもかかわらず、やや鈍い。その要因の1つにコストがある。版材料費自体は水あり版とはほとんど変わらないが、市場に出回っている数の差がその価格差(水あり版の1.2倍〜1.5倍の価格)の要因となっている。版メーカーが東レ1社に限られていることもコストが下がらない一因であろう。また、冷却装置の後付けもコストが高い。ただ、ここ4〜5年に販売された水あり印刷機にはあらかじめ、この設備が搭載されており、この冷却装置の有無が水なし印刷導入数の分岐点に成り得る可能性はある。資材、印刷機単体で見るとコスト高が目立つが、実際は、トータルコストでは水ありとほぼ変わらない域まで来ている。この先、ケミカルレス版の登場により現像液も不要となり、利益率ではむしろ水なし印刷に軍配が上がっていくとみられる。コスト高というマイナスイメージを打破するためには、今後は、経営コンサルティング要素を含んだ普及活動が必要になってくると思われる。
他の要因としては、印刷会社の水なし印刷に対する意識の問題である。版やインキの品質は向上しており、以前に比べて運用性は上がってはいる。しかし、実際はまだ水なし印刷は難しいという意識が印刷会社間ではあるようだ。それは、業界内の「印刷文化」が影響している。初期設定さえ整えれば数値を管理していくだけで品質を保つことのできる水なし印刷を「管理印刷」とすれば、水あり印刷は印刷オペレーターによる「熟練印刷」である。その「熟練印刷」への慣れが、数値管理に対する苦手意識を植え付けたと同時に、新たな印刷方式である水なし印刷の参入を妨げてもいる。この苦手意識をどのように克服させるかも普及の焦点になると思われる。
印刷品質は技術革新や長年のノウハウの蓄積によって、安定期に入ったと言える。導入している印刷会社では、特に水なし印刷指定がなくても水なし印刷方式で印刷しているが、顧客の反応は全く問題ないようだ。資材においても、年々開発が進んでおり、ノンVOCインキなどより環境に配慮した製品が発売されている。ただ、発売後間もないということもあるが、その使用量は少ない。ノンVOCインキを使用する場合、その前に使用していた鉱物油を含んだインキを残さず洗い流す作業が発生する。所謂特色と扱いが同じとなり、しかもそれが全胴となると作業効率は上がらないのは容易に想像できる。また、鉱物油を含んだインキは洗い油で洗浄しなくてはならないため、ノンVOCインキを使用するためにVOCを発生させてしまうというジレンマが起きる。このインキを活かすためには、ノンVOCインキ専用機として社内の印刷機を割り当てることが必要である。水なし印刷関係者は、ケミカルレス版やノンVOCインキを水なし印刷のシンボルとして掲げ、普及活動に努めたい意向を示している。
水なし印刷の普及率は、日本WPAの会員登録数の増加から年々上がってきているとみられる。ただ、導入企業数はまだまだ少ないと言っていいだろう。理想を言えば、水なし印刷は印刷方式であって、企業の差別化要因になるのではなく、水あり印刷に変わって主流の印刷方式になる、つまり、環境に良いことが当たり前になることが望ましい。これが実現すれば、印刷産業の社会的存在感は増すだろう。しかし、印刷業界は典型的な中小企業型であり、資材や設備転換の必要な水なし印刷の導入が裾野まで広がるとは企業体力の問題上考えにくい。日本WPAの言うように、まずは流通している印刷物の20%を水なし印刷方式で印刷することを目指すべきだろう。そのためには、水なし印刷の品質面をもっと訴えていく必要がある。現状、品質面のPRは、環境面のPRに比べて弱い印象がある。溶剤使用とは関係ないデジタル印刷機などの普及によって、今後は、環境面のPRだけでなく、品質面でのPRも同時に行わなければ、水なし印刷の選択優位性を保つのは難しくなってくると考えられる。また、この品質面でのPRが、IR関連物や環境報告書以外の用途拡大に向けての特効薬に成り得ると思われる。

2008年3月30日

ある工場での水ありと水なしのVOC放散値の優位差

都内の水あり機と水なし機を同じフロア―に設置している、ある印刷工場でVOC測定をさせていただき、水ありと水なしのVOC放散値の優位差を調べさせていただいた。同一室内につき、VOCは工場室内に放散されるため、基本的には優位差の見られない形になるかと思ったが、結果、両方式間に優位差が見受けられる形となった。
この工場では2007年4月に測定したデーターがあり、今回、2008年3月に測定したデーターと合わせて比較させていただいた。(単位はppm)

工場内入口 07/04測定 08/03測定
                       0                            0

印刷機A(水なし) 外国製菊全判5色機
給紙部                  73.0                          65.2
胴間(藍胴−紅胴)           83.1                          70.5
インキ壺(2胴目・藍)          66.6                          65.0
ブラン自動洗浄             898.0                         ---
排紙部                  71.5                          73.1

印刷機B(水なし) 外国製菊半才2/2兼用4色機
給紙部                  66.7                          119.0
胴間(藍胴−紅胴)           74.9                           ---
インキ壺(2胴目・藍)          79.0                          83.1
ブラン自動洗浄             ---                            ---
排紙部                   67.0                          71.5

印刷機C(水あり) 外国製菊全判4色機
給紙部                  110.0                       (運転待機中)
インキ壺(2胴目・藍)          113                           ---
胴間(藍胴−紅胴)           121〜433(回転による振れ)         ---
湿し水部(3胴目紅)           787                          ---
インキ壺(2胴目・藍)          113                           ---
排紙部                   98.0                          ---
 湿し水タンク               471                           ---

印刷機D(水あり) 国産製菊全判4色機
給紙部                  77.9                          89.9
インキ壺(2胴目・藍)          113                           74.5
胴間(藍胴−紅胴)           145.0                         119.0
湿し水部(3胴目紅)           1700                          1469.0
排紙部                   97.8                          73.3
 
オフセット印刷工場では空調(恒温恒湿)をはかる関係上、換気量はある一定限度以下にならざるを得ない。つまり、室内に発生するVOCはどうしてもこもりがちになる。しかも、VOCは部屋全体に行きわたるため、上の結果を見ても、同一室内にある水なし、水ありの両印刷機の給排紙部での測定値の優位差はそれほどみられない。ただし、水あり機CとDの湿し部からはある一定量のVOCが放散されるが、水なしにはこの要素がなく、水なし機の全体的な数値の低いことがうかがえた。水あり印刷機の悩みとして、能率向上・品質向上を狙うと湿し液にVOCを含んだ添加材を入れることは避けられず、この二律背反を以下に解決して行くかが、課題となっている。この工場は全体的には外気へのVOC放散量は100pp以下に収まっていて環境への配慮を相当に払われていた。
200803280949001.jpg
外気ダクトから排出されているVOCは100ppm内に収まっていた

200803281002000.jpg
工場内VOC測定の一風景

2008年3月28日

Yano Reportで日本WPAがとり上げられる

以下の文面は?矢野経済研究所のYano Report 2008.3.10, No.1245に掲載された内容である。

水なし印刷に対する日本WPA、東レの取り組み
前述の通り、近年、環境対応への様々な取り組みを行っている中で、本稿では、印刷方式そのものが環境に対応している水なし印刷に注目する。
水なし印刷は、エッチ液やIPA(イソプロピルアルコール)などの有害物質が含まれている湿し水を使用しない環境対応のオフセット印刷方式である。従来の方式である所謂「水あり」印刷は、水と油の反撥する性質を利用し、湿し水を親水性である非画線部に定着させることによって親油性である両線部にインキを乗せ、印刷する仕組みとなっている。
水なし印刷では、版表面のシリコーンゴム層が従来の版の湿し水の役割に相当し、インキを反撥させる。
水あり印刷は、刷版が平凸版で、この凸版部分がはた画線部になるのに対して、水なし印刷は、刷版が平凹版で凹版部分が画線部となるため、水あり版に比べて露光・現象面積が格段に少なくなる。そのため、廃液量・薬液使用量に大きな差が生まれる。それにより、水なし印刷は、刷版?印刷工程時における有害物質の使用量を大幅に削減でき、環境への負荷を低減することができる。
 また湿し水を使用しないことによって、インキが水ににじまないため、網点のひとつひとつがくっきりと再現され、高精細な仕上がりとなる。湿し水のコントロール技術が不要であることや、版や専用インキの品質向上により、操作性も良い。印刷機起動時の立ち上がりの早さから損紙も大幅に減らすことができ、コストや産業廃棄物の削減にも効果が期待できる。

                  廃液に含まれる有害物質量
            水あり版                  水なし版
            現像液廃液 湿し水廃液        現像液廃液 湿し水廃液
PH             12.8      5.8            7.4       -
BOD(mg/リットル)  645       20,460         38        -
COD(mg/リットル)  21,500    14,080         110       -

湿し水に合まれているIPAは、大気中に有害なVOCを排出するため、多方面で使用規制が進んでいる。 2001年8月に日本印刷産業連合会は、印刷産業向けの「オフセット印刷サービス」グリーン基準において、『温し水のIPA濃度を5%以下』とする自主規制を策定、同10月には、東京都の環境確保条例がIPAを「適正管理化学物質」に指定し、排出量の報告を義務付けた。また、同12月にグリーン購入ネットワーク(GPN)が、印刷発注者向けの.「オフセット印刷サービス」発注ガイドラインにおいて『印刷時の湿し水にイソプロピルアルコール(IPA)を使用しない』あるいは『溶液濃度を5%以下に管理している』ことを、チェック項目に規定した。
環境保護の観点で内外から印刷産業の変革が注目されており、水なし印刷は、その一翼を担うと期待されている。

       水あり版            水なし版
       現像廃液 湿し水廃液   現像廃液 湿し水廃液
新廃掃法   ×      ○(*)        ○       ○
下水道法   ×      ×          ○       ○
○…非抵触  ×…抵触 *他項目で該当する場合あり。

日本WPA 将来は印刷物の20%を水なしに
水なし印刷の技術自体は1970年代から開発されていたが、92年にアメリカバージニア州環境改善局が、78年に制定された産業廃棄物を下水道に排水する取り締まり強化のための条例「事前処理基準」をせさん背景に、水なし版の使用を奨励したことにより、バージニア州周辺でさかんに活用され始めた。その活動がアメリカ全土に広がり、93年に普及を進める団体、水なし印刷協会(WPA)がシカゴで設立された。 1990年代後半にはバタフライマークが制定され、フオード社がいち早く使用し始めた。それを見たトヨタ自動車が愛知県内の印刷会社に印刷物発注の際にバタフライマークの使用を提案し、日本で初となるバタフライマークの表示が許可された。その後、日本の印刷会社数社がWPAからバタフライマークを取得し、日本でも水なし印刷が話題になり始めた。そのような状況の中、01年に開催されたJGAS2001において、凸版印刷をはじめとする全国のWPA加盟印刷会社約20社が集まり、日本のWPA活動の第一歩を踏み出した。そして、02年5月に日本水なし印刷協会(日本WPA)が正式に発足された。発足当初は30社だったが08年1月現在は137社の会員企業、20社の協賛企業で成り立っている。会員数だけで見ると、まだ決して十分とは言えないものの、07年4月の時点で会員数は115社だったことを考えるとここ1年未満で22社増えており、普及が進んでいることが分かる。
 ただ、加盟企業は東京近郊に集中しており、利用も関東が中心である。地方になると、地域になかったり、あっても県で1社という状況で、地域別で普及率に差がある。それにより、故意ではないが、バタフライマークが無断で使用されたケースもあった。まだまだ地方での協会の認知度は低く、その点は今後の課題でもある。
 組織はアメリカ、目本の他に、ヨーロッパ(ドイツ・ミュールハイム)にもある。最近では中国の印刷会社も2社加盟しており、韓国企業からの問い合わせもある。
 水なし印刷の利用者は60%が民間企業、40%が官公庁で、印刷物全体の5%が水なし印刷で印刷されている。企業の環境報告書に限っていえば、利用は65%を越えている。民間企業では、トョタ、目産などの自動車メーカーやオムロン、セイコー、リコー、新目本石油、
ビクター、ロイヤルホストなどで採用実績がある。
 水なし印刷は現状、技術的には安定期に入っている。ただ、各社の導入ペースはやや鈍い。その要因はコストにある。水なし版は水ありPS版と比較して1.2倍?1.5倍の価格で、CTP版になって差は縮まったとはいえまだ高価である。版材料費自体は水あり版とはほとんど変わらないが、市場に出回っている数の差が高価格の要因となっている。版メーカーが東レ1社に限られていることもコストが下がらない一因であろう。印刷機に関しては、温し水を使わないので版面とインキローラーの温度が上がるため、ローラー内部に循環冷却通水を施す必要がある。ただ、顧客(プリントユーザー)の短納期要求に応えるため、ローラーの回転数を上げて刷ることが多く温度が上昇しやすいため、ここ4?5年に販売された水あり印刷機にはあらかじめ、この設備が搭載されている。水あり印刷機に冷却装置を後付けすることは、技術的には容易である。しかし、後付けはコストが高く、また水あり印刷に比べて水なし印刷は温度の他、湿度なども厳密に管理しなければ品質が保てないので、管理のための設備投資費がかかることは否めない。
 またもう1つの要因は、印刷会社の水なし印刷に対する意識の問題である。前述の通り、版や専用インキの品質は向上しており、以前に比べて運用性は上がってはいる。 しかし、実際はまだ水なし印刷は難しいという意識が印刷会社間ではあるようだ。水なし印刷導入にあたって、水ありとの兼用というスタイルでは効率が悪いので、体力のない中小企業においては、水なし印刷専用体制を整える必要がある。その切り替えのリスクも歯止めをかけている要因と考えられる。
 今後の水なし印刷の最大の課題は「普及」に尽きる。日本WPAでは、HPの充実(現在、ヒット数は約40万/月)やDM発行、展示会やイベントヘの参加、企業向けの勉強会など、水なし印刷の普及活動を積極的に行っている。今年は洞爺湖サミットのポスターやdrupa08への3極事務局合同出展など大きなイベントでの普及活動を行う予定である。
また、大日本インキ化学工業が開発した石油系溶剤を一切含まない水洗浄性水なしインキ 「W2」の普及に力を入れている。石油系溶剤が含まれている通常のインキは、洗浄の際に洗い油を使用する。日本WPAによると、洗い油は、湿し水の次にVOCを放出するとされており、環境負荷が高い。この「W2」は、水性液で洗浄でき、洗浄工程におけるVOCを大幅に低減することができる。水に馴染むインキなので、油性インキと湿し水で印刷する水あり印刷での使用はできない。水なし印刷方式にしか応用できない技術である。
このインキの普及に取り組むことによって、水なし印刷の普及との相乗効果を狙う。
 今後の展望としては、会員数を250社?300社に増やし、印刷物の20%を水なし印刷方式で印刷することを目指している。また、日本だけに留まらず、世界的視野を持って水なし印刷の普及に取り組む方針である。

東レ株式会社
水なし版独占メーカー 年率約20%の成長を続ける

 東レは、連結売上1兆円を超える大手素材メーカーである。水なし印刷事業は、情報通信材料・機器事業内の印写システム部で行っている。情報通信材料・機器事業全体の2006年度(2007年3月期)の売上は、2,638億800万円(前年同期比12.3%増)、2007年度(2008年3月期)は推定2,760億円(4.6%増)となる見込みで、順調に売上を伸ばしている。その中で印写システム部の売上は約100億円で、水なし版事業の売上はその半分弱と推測される。
 水なし版事業の売上は、ここ2?3年で年率約20%の成長を続けている。その要因は、環境に対する社会的意識の高まりによって顧客(プリントユーザー)や印刷会社の環境対応への取り組みが活発化したことと、印刷会社からのスキルレス要望が強まっていることが挙げられる。印刷会社では、経験豊富な印刷オペレーターの数が年々減少している。初期設定さえしっかり行えば、経験やスキルに左右されることなく、若手のオペレーターでも品質を落とさず製品を提供することができる水なし印刷のニーズが増えてきている。
 また、サーマルCTPの普及もその要因に挙げられる。アナログ(フィルム)製版時は、その調子再現差により、水あり印刷物に見慣れた顧客(プリントユーザー)、印刷会社が水なし印刷物を受け入れない傾向が強かったが、CTP化により、調子再現差という点で、水あり印刷との差が縮まり(水あり印刷の調子再現性が追いついてきた)、それが導入数増のきっかけとなった。両面印刷機の登場も見当性能が高い水なし印刷の普及を手助けした。
同社の推計では、両面機分野の水なし版シェアは二桁を超えている。

インキ成分の構成比
成分       ドライオカラー  ドライオカラーナチュラリス ナチュラリス100 W 2 
          (一般インキ)   (大豆油インキ)        (ノンVOCインキ)
顔料       10?20      10?20             0?20
樹脂       30          25?30             20?30
植物油      10?15      0                  5?15
大豆油      0          20?25             25?40
石油系溶剤   30?40      25?30             0
助剤        3?7        3?7               3?7
合計       100         100                100

 日本WPA及び、全日本印刷工業組合連合会内組織である全印工連水なし印刷研究会の普及活動も大きな要因の1つと考えられる。
これらの団体は、実際に水なし印刷を導入している印刷会社の従業員をパネラーとして招き、セミナーや勉強会を積極的に行っている。実体験に基づくスピーチは、普及にあたって大きな効果をもたらしているようだ。
 同社は、1977年に印刷用版事業を始めるにあたって樹脂凸版「トレリーフ」の本格生産を行った。もともと感光技術力という下地があり、その多角展開の一環としてオフセット版には注目していたが、富士フィルムが早期から参入していたということもあり、当時3M社の技術であった水なし印刷に注目した。
その技術を継承し、実用化に向けた開発が進められ、79年に同社初の水なし版が発売された。新しい技術ということもあり、苦戦が続いたが、90年代前半より黒字へ転換した。国内の販売体制は、07年8月に富士フイルムグラフィックシステムズ(以下FFGS社)と国内縁代理店契約を結び、今まで主要7社(FFGS社を含む)の代理店を1社にまとめた。同年10月より国内販売分すべては、FFGS社を通じて販売されている。残りの6社もFFGS社を通じて代理販売している。自社内の販売組織は東京、名古屋、大阪、九州の各拠点にあるが、現在はFFGS社と協業して営業活動を行っている。
 同社が販売している水なし版は、PS販(ポジタイプ、ネガタイプ)、CTP版がある。PS版は「HG?2」、「DG?1」、「SG?3」のポジタイプ3種と「TANE」のネガタイプ1種である。CTP版は「VG?5」の1種が現在販売されている。「VG?5」は、水なし販売上の80%を占める。PS版の需要は、比較的CTP化の遅れているパッケージ分野や、昔ながらの製版方法での取引が続いている仕事がまだ根強く残っているため、今後もなくならないと考えられる。
 07年9月に開催されたIGAS2007で出展された水なしケミカルレスCTP版「INNOVA(イノーバ)」は08年期中には発売される。これまでの水なし版は現像工程で循環処理をしているため、回収廃液は出ないが現像液自体は使用していた。それに対して「INNOVA(イノーバ)」は、現像液を一切使用せず、水道水のみを使用するため、現像工程でのケミカルレス化を実現している。一般のサーマルCTPセッターに対応しており、運用性も良い。水あり販でも現像工程での廃液を出さないことで注目を集めている「プロセスレスプレート」があるが、湿し水で現像したり、現像廃液をセッター内でろ過したりと完全なケミカルレスは実現できていない。この版は、完全ケミカルレスを実現した唯一の版であることから、発売前から注目されている。
 現像機のスペースを殆ど必要としないというメリットもあり、販売にあたって、小規模の印刷会社も販売ターゲットに入れているが、企業体力の問題から水なし印刷の導入が遅れているのもこの層である。この層での採用が増えれば、水なし印刷の更なる普及につながると期待される。また、高精細印刷物のニーズに合わせて、FMスクリーン対応の水なしCTP版も発売予定である。
 水なし印刷の普及について、同社は、冷却装置の有無が1つの分岐点になっていると考えている。冷却装置の後付けは、コストメリットという点で劣り、これが水なし印刷導入においてのリスクとなっている。同社は、ただ資材を売るのではなく、印刷会社の利益率改善のための提案を含めた営業活動をしていくことで水なし印刷を広めていきたいと考えている。ただ、初期設定さえ整えれば数値を管理していくだけで品質を保つことのできる水なし印刷を「管理印刷」とすれば、水あり印刷は印刷オペレーターによる「熟練印刷」であり、その業界内の印刷文化の違いが、新たな印刷方式である水なし印刷の参入を妨げてもいる。
 現状、水なし版市場は同社の独占市場であるが、決して楽観はしていない。富士フィルムは、過去に参入経験がある。コダックグラフイックコミュニケーションズは、海外では水なし版の研究を行っている。ただ、水なし版における実績とノウハウという点で同社に一目の長があり、自社の更なる技術革新、市場拡大のため競合他社を歓迎する感もある。
しかし印刷方式という観点で考えると、薬剤使用を必要としないデジタル印刷の普及は、1つの脅威でもある。現時点では、品質においては、オフセット印刷に劣るという認識が業界内ではあるが、その差はかなり縮まってきている。部数において、オフセット印刷との棲み分けはできると考えられるが、素材中心の事業を展開している同社にとって、デジタル化はこれからの事業展開において不安要素の1つになってくると考えている。
 今後、印写システム事業部ではシール・ラベル分野で商いシェアのある「トレリーフ」と水なし版の積極的な事業展開を進めていく。
特にここ数年、水なし版需要の伸び率は高く、更なる事業拡大を期待し、3年後には売上倍増を狙う。また、フレキソ版事業も立ち上げる予定であり、この3事業を柱とし、ゆくゆくは、売上3倍増を目指す方針である。

2008年3月19日

「環境低負荷な水なしCTP平版の開発」が「平成20年度 日本印刷学会技術賞」を受賞

日本WPA協賛会員の東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:榊原定征、以下「東レ」)は、「環境低負荷な水なしCTP平版の開発」について、(社)日本印刷学会から「平成20年度 日本印刷学会技術賞」を受賞した。このたびの受賞は、東レが開発した水なしCTP平版の、環境への低負荷という特長を始め、経済的優位性や優れた印刷特性が高く評価されたものである。
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 (社)日本印刷学会は、1928年に創立されて以来、一貫して印刷業界と大学、公設研究機関など産学官の技術者や研究者間の情報交換・交流を促進し、印刷技術のレベルの向上と普及に取り組んできた。その活動の一環として、毎年、印刷産業の発展、あるいは印刷技術の他産業への応用に顕著な貢献をした技術内容に対し、「日本印刷学会技術賞」を授与している。
 東レは今回、水なしCTP平版の開発による印刷産業の発展への貢献が認められ、同賞を受賞するに至った。

 近年、世界的な環境意識の高まりの中、平版印刷業界においても、VOC(揮発性有機化合物)低減やアルカリ現像廃液の削減など、環境問題への対策が急務となっている。また、デジタル技術の進展などを背景に、画像データをレーザーで印刷版に直接書き込むというCTP(Computer To Plate)システムの普及が急速に進んでいる。
 東レではこうした背景を受け、2000年4月に、近赤外レーザー光により画像形成可能で、幅広い分野での印刷適正に優れた水なしCTP平版の開発・製品化に世界で初めて成功した。この水なしCTP平版を用いた印刷システムは、湿し水不要によるVOC低減や水現像方式による廃液レスといった環境低負荷を、印刷品質の向上・安定、コスト低減といった経済性とともに提供する技術として、ユーザーから高い信頼と評価を得ている。

 東レは今後も、“Innovation by Chemistry”のコーポレートスローガンのもと、水なしCTP平版のさらなる性能向上、安定供給・サービスを通じて、持続可能な社会の実現、印刷業界・情報化社会の発展に貢献しくとしている。

 なお、本技術については、昨年、グリーン・サステイナブル ケミストリー ネットワーク(GSCN)から、化学製品の使用過程における人と環境の健康・安全に対する影響を低減させようとする化学技術・製品において、独創的な研究開発を行い、グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)の推進に大きく貢献したという功績が認められ、「第6回(2006年度) グリーン・サステイナブル ケミストリー(GSC)賞」を受賞している。今回は、これに続く受賞となった。

 今回の受賞に関する主な技術の特徴は下記の通りである。

記 
受賞テーマ「環境低負荷な水なしCTP平版の開発」
本技術の特徴
 地球温暖化など地球レベルの環境問題が国際的にも議論される中、平版印刷業界においても、VOC(揮発性有機化合物)低減やアルカリ現像廃液の削減など、環境問題への対策が急務となっている。また、印刷業界においては、デジタル技術の進展を背景に、銀塩フィルムをマスクとして用い紫外線照射するという従来の画像形成方式に代わるシステムとして、コンピューター上のデジタルデータを、レーザーを用いて印刷版に直接書き込むというCTP(Computer To Plate)システムの普及が急速に進んでいる。
 東レでは、1974年(昭和49年)から高分子化学、光化学をコア技術とした印刷用版材の事業を展開しており、環境負荷の少ない水なし平版では先駆者として市場での確固たる地位を築いてきたが、このような動向を受け、新たに、水なしCTP平版の開発に取り組んだ。その結果、2000年4月に、光(熱)剥離機構と呼ぶ新規な画像形成機構の発明、新たなシリコーンゴム材料の設計・開発等により、近赤外レーザー光により画像形成可能で、一般商業印刷分野から新聞印刷分野など広い分野での印刷適正に優れた水なしCTP平版の開発・製品化に世界で初めて成功した。水なしCTP平版を用いた印刷システムは、水ありCTP平版(PS版)を用いた印刷で必須である湿し水が不要となり、規制の対象となっているイソプロピルアルコール(IPA)を含め、湿し水由来のVOCを6〜8割も低減できる※注1と共に、水現像方式により、水ありCTP平版の現像で使用する強アルカリ現像廃液を全く出さないなど、極めて環境に優しいシステムとなっている。さらに、印刷品質の向上と安定、印刷コストの低減も図れるシステムである。

本技術の主な展開先と今後
 昨今の環境意識の高まりを受け、環境問題に熱心な公的機関・企業において、グリーン購入基準などで水なし印刷の指定が行われると共に、その象徴であるバタフライロゴの印刷物への掲載が一層、進められるなど、水なし印刷が大きなうねりになりつつありる。公的機関の発行する広報誌や、企業のカタログ、宣伝物などの一般商業印刷分野をはじめとし、書籍、雑誌などの出版印刷分野で、年々、水なし印刷の採用が拡大している。特に最近では、環境先進地域の欧州において、日本発の環境に優しい技術として高く評価され、これまで適用が難しかった新聞印刷分野への展開も進んできた。さらに、水あり印刷では印刷難易度の高いとされる、パッケージ印刷、CD/DVD印刷分野へと展開されるなど、世界的な規模で水なし印刷の普及が加速している。
 東レは、水なしCTP平版のさらなる性能向上、安定供給・サービスを通じて、拡大する市場のニーズに応えていくとしている。
※注1:平成18年東京都環境局VOC対策アドバイザー調査による。

以上

2008年3月17日

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