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日本WPAの活動 - セミナー・見学会 -

レポート1「UV水なし+キーレス・アニロックスで印刷技術の新再生」

2011年3月13日

(社)日本WPAは印刷技術の再生を目指し、この度、印刷技術者、版材メーカー要員、流通関係者、協会職員のチームを組んで、新世代の印刷技術の視察のため、2月6日から10日までドイツへ渡った。
印刷の付加価値を高めるには、紙だけでなく特殊原反とか厚紙を通したく、予め日本の素材、日本で製版したデーターをドイツに送りこみ、日本的条件のもとでの印刷試験を行った。市場要件から見て、単なる紙の印刷では今日、価値低下に見舞われ、コモディティ化の中で生きぬかねばならない。
注目した新印刷方式「UV水なし・キーレスアニロックスインキング」とは、版を抱いたアナログ印刷にして、デジタル印刷に限りなく近づけたもので、小ロット・特殊原反をこなせられる。この実機での10種に及ぶ、実用印刷試験を欧州で試みることになった。
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KBA MetroPrint社で印刷実証テストを重ねた一行
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UV水なし・キーレスアニロックスインキングを抱いたGenius機

リーマンショック以降の欧州では、印刷会社の倒産風が吹き荒れた。欧州を代表する、英国の印刷界について触れてみる。信用調査専会社Experian社の最新の統計によると、印刷物、紙、および包装関係の破産社数は2010年では52社で前年比24.6%にまで下がった。BPIF(英国印刷工業組合)専務理事アンドリュー・ブラウンも、印刷産業の倒産水準は2010年の最後の四半期に低下したことを明らかにしている。これは喜ばしい縮小数字であったが、印刷会社の約10%がこの3年で倒産したという事実を和らげなかったと付け加えている。それほど倒産風が吹き荒れたのだ。

メディアシフト論は欧州では、米国で言われているほど、全うには受け止められていない。印刷不況の理由は、印刷の需給バランスが崩れていて、英国では付加価値税の上昇により、需要家はまずます、経費削減に走り、結果、安値受注が横行することになる。印刷企業にとって、どこかのタイミングで、設備投資も必要なのであろうが、その見極めがつきにくい。この状況は欧州大陸の独仏でも似たりよったりである。
我々は、印刷1.0のバージョンで勝負するのでなく、斬新的な印刷2.0バージョンが存在しないかと、今回、KBA-MetroPrint社のGenius(天才)に目をつけ、その印刷試験に臨んだのだ。

3月8日、デモセンターに、以下の10種のテストを決められた時間でこなす、意地悪い仕事を持ちこんで印刷試験を行った。
1)標準紙0.1mmでの印刷テスト、先方のCTPで版を作っているので、版見当は一発で合った。刷り出しは10枚で色が決まる、
2)厚紙、0.65mmに変えて印刷する。集中紙厚制御装置のおかげで、調整ネジ2箇所で5胴の圧胴の間隔を一発で逃がせられるので、紙の厚みが変わっても、仕事ははかどれた。
3)逆に、最小斤量の薄紙通しを行った。
4)KBA MetroPrint社は手配したレンチキュラー版での印刷試験。チェンジが5模様も入った欲張った模様であった。
5)KBA MetroPrint社が手配した別版のレンチキュラー版での印刷試験。
6)日本側で提示したレンチキュラー模様での印刷を行う。CTPデーターを送っていたので、一発で見当は出てくれた。これも10枚の印刷で色が決まる。100枚を通したが、目視での濃度差が認められない。水なしアニロックスインキング方式の利点がきいてくれている。見当を合わせた後に、5胴目の版を挿入し自動版付けをする。さらに、はずしていた5胴目のインキ壷を機械にセット挿入し、白インキの印刷を入れる。この操作は10分内で本刷りに入れた。これは正に限りなくデジタルに近い枚葉印刷機と言える。日本側の技術者K氏の自社での経験では通常このレンチキュラー版の印刷前準備作業は小1時間ぐらいかかり、考えられない状況と驚嘆していた。さらに感心した点は、最後に刷った白インキの隠蔽度である。日本では2度刷りぐらいの効果が1度刷りで出ているではないか。
7 )日本から持ち込んだPP素材の印刷適正試験を行う。デモセンターのミスで100枚送った素材の99枚は気を利かせて、プライマー処理をしたものになっていた。当然これは問題なく印刷できた。われわれが見たかったのはPP素材のインキ密着性がどの程度のものかであった。幸い1枚残っていたプライマー未処理のPPを通し、テープによる密着性を確かめたが、当然のことながら、不適正の結果となった。主任のパブロフ氏の見解によると、コロナ処理ユニットをフィーダーにつける(特別装置)ことで、この問題は解消されると自信に満ちた回答をしてくれる。
8 )日本から持ち込んだ、カード印刷用のテストチャート、「黒ベタと碁盤目細線の4色掛け合わせ」の再現の印刷試験。ベタの隠蔽度は納得できる水準であった。紙とともにカードの素材を通したが、全く問題はない。
9)日本側から持ち込んだ単面カードを数面台紙貼りした特別紙の印刷試験。紙のそりがあり癖直しをして印刷する。問題なく通せ、印刷結果も満足できるものであった。
10 )黄赤藍墨の各色のべた版印刷試験。墨の乾燥度を調べたが、問題はなかった。

以上の印刷試験で意地の悪いのは、紙の厚みが多種多様で、圧胴の逃がし作業が1箇所で全胴を利かせられる構造は、現場にとって作業性の福音と判断した。10時からはじめて、3時過ぎに全試験を終えられたのだから、驚嘆以外の何ものでもない。しかも、印刷濃度は独特の機構のお陰で、最初から最後まで一定の濃度で印刷してくれたのだ。
印刷の仕事が減ると騒ぎ立てるのでなく、印刷人は印刷技術の高度化を諮り、印刷需要を再喚起させることが責務ではないか、それでこそ儲かる印刷企業の体質を築けるのでないかと痛感した。
マーケットが成熟している中で、小量生産、迅速切り替えがもてはやされてきている。しかし、その上を行く、UV・水なし・キーレスアニロックスインキング・厚い素材・非吸収素材とより幅広い用途開発のできる印刷方式を意識すべきではなかろうか。これは言わば印刷2.0バージョンといえる内容ではないのか。
どうしても、理解しがたいのは、キーレス・アニロックスインキングの機構であろう。

fig1-chamber.jpg左・壺が開く、右・壺が閉じる  


fig2-chamber.jpg取り外しのできるインキ壺

このインキ壺は圧搾空気により後方ブレードで壺を閉じることができる。しかも、この壺(チャンバー)は取り外しができ、特色をこなすには誠にうってつけである。余分の壺を用意して、予め入れておいた別の特色とつけ変えることで仕事がはかどれる。
注目すべきは、アニロックスに最適量のインキを詰め込む仕掛けで、これはドクターの掻き取りでできる。アニロックスの窪み量の一定割合のインキが版に転移されるが、他方、非画像部はそのまま残ったままで戻ってきて、新しいインキと混ざって壺に戻される。インキ膜厚はどこをとっても一定で、しかも、1枚印刷するごとにインキが入れ替わってくれている。
水なし印刷ではこの着けローラは横振りせずにすみ、FM20ミクロンの小さな点でも再現されるのだ。着けローラが横振りすると粗い点の再現しかできない。KBA MetroPrint社は8年前に、この機械を発表した。当初は油性タイプのバージョンも用意したが、市場に出して見て、UV水なしのバージョンが注目され、ほどなく、UV水なしに絞って生産に励んだ。現在では、170台ほど全世界に出荷されている。数年前に、ドイツの他社がこれに見習って水あり類似機を出してくれているが、そのコンセプトは大きく異なる。

3月7日(月) 午後2時にSchwaebisch Hallなる工業団地にある、Siller Multicolor社を訪問した。創業30年、従業員数70名の同社はフォーム印刷でちょっと有名な会社であったが、需要減で業種転換に迫られ、フォーム輪転機の持つ加工性を引き出し、「3カ月表示実用カレンダー」などを制作し出した。目下は、HamburgのNotes社の翼下に入り、事務用グッズの生産などをも手掛けている。ファンシーPOST ITをこなすのに、Geniusを使ったりしている。むろん、それだけではない。PPのクリヤファイルをこなすため、Geniusにはコロナ装置を付けている。
corona device.JPG 
コロナ放電装置を付けたGenius

7年前にGeniusを入れたが、特殊印刷の需要増により、ニス引き装置+延長デリバリとコロナ装置を付属したフル装備機を2年前に入れ替えた。生産部長・Steindorssonは絶えず、新しい商品開発、印刷製品開発、そのための印刷技術の高揚を図っているとしていた。ちょうど今、ある仕事をターゲットに、艶の輝度が上がった部分ニスの仕事に目下、チャレンジしているとしていた。 
3カ月表示実用カレンダーはドイツではヒットしてくれ、お陰様で年末までは大忙しであった。静電タック紙の透明赤玉を本日に貼り付けるなど、斬新さと実用性をつけたカレンダーで、これはフォーム印刷系のMuller Martini社の加工部をつけた2台の輪転機、Alprinta740でもって、印刷加工を1工程で施していた。 

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3カ月表示実用カレンダー
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広告付きギフト商品・マイクロタック紙

できることなら、このくだりにつき5月26日の第2回総会時にパブロス氏を招へいして講演していただきたいものだ。

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