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事務局長の印刷未来図の見解が業界誌に掲載される

2007年5月 7日

中小印刷化の未来はどのように変化していくのであろうか。本協会の事務局長の見解が業界誌紙・印刷新報4月23日号に掲載された。その内容を紹介させていただく。

「印刷産業の将来予測」
百社百様の会社形態に分化・進化
7つの再生戦略で考える

私がこの業界へ入りたてのある時、四国の印刷人と話をしたことを思い出す。当時の印刷界は平台活版機が主流であったが、ダムの建設現場に活版機を持ち込み、今でいう、コピー機変わりに、文章印刷をしたと言うのだ。当時の印刷メディアは今から見ると、ハードコピーで文字通りのオンリーワンの地位を占めていて、ink on paper(紙製印刷物)のカバー領域は大変広いものであった。今はコピー機があり、パソコンとプリンターがあるため、紙製印刷物の占める地位は当時から比べると狭まったものになっている。ちょっとした事務所で使う、名刺印刷、年賀状印刷、事務用伝票・帳票、あるいは封筒類、一部、パンフレット類はかつて、中小印刷会社の占有領域であったが、いまでは、この領域は限定されたものとなっている。しかし、新製品の頻発発表とか、販促・広報の情報量の増加のおかげで狭まった領域であっても、紙製印刷物の総量は微増してくれている。
わが国では人口減、高齢化を迎える時代に入り、まさに、紙製印刷物の需要は成熟化の領域に達している。くわえて、インターネット、ケータイなどの電子メディアの登場で紙製印刷物の地位はこれから微減少をたどって行く趨勢にある。
米国の傾向を眺めると、著名な独立系印刷コンサルのジョー・ウエブ博士は彼がかねてから予想をしていた所見が、結果的に当たってしまったのだが、印刷出荷高は2002年から見て2006年時点で20%の落ち込みを見せている。大口の通販カタログなどが、インターネット、その他の媒体に食われていく傾向があるとしている。彼の予想ではまだ、この先、紙製印刷物の出荷高は落ちてゆくとしている。興味深いことは、日本の印刷出荷高は10数年の間に、20%の落ち込みを見せているのと違い、米国は、ここ5?6年で20%の落ち込みを見せていることだ。

この表からうかがえることの一つに、近年の傾向として、GDPが増加すると印刷出荷高が減少し、GDPが減少すると印刷出荷高は増加するとみられることだ。これは企業の利益増加により、企業は情報化投資に走る結果、印刷物へ需要が流れてこないことによる。GDPが減少すると、企業の利益は減少し、既存の印刷物に頼ろうとする動きが出るとみている。ジョー・ウエブ博士はこれから先も、商業印刷分野の印刷出荷高も減少するとみる。他のメディアとの置き換え、印刷ビジネスの実態の変革、つまり、オフィス・スーパの登場と余波、デスクトップ印刷・ネットワーク印刷・pdfソフト・コピー流通が加速し、商業印刷業者の一部は本業から広告サービス・マーケティングサービスなどの他業種へ転業して行くからである。
欧州に眼を転じると、拡大EU統合の余波で、この5年間で旧西欧圏に8万社あった印刷会社の多くの部分が、消滅の憂き目にあっている。皮肉にも、ブローカー化した印刷会社は印刷スポンサーと結びつき、印刷発注代行会社を作り上げ、彼らが旧東欧の印刷会社と結託し、旧西欧の印刷物を取りまくっている。ひところ、我々が羨望するほどの安定した旧西欧圏の印刷価格はいまや、ひどい水準に落ちてしまっている。加えて、印刷発注代行会社はより安く印刷物づくりできる先の調達に走り、近年では東アジア諸国からの印刷物の調達にまで走る。
これを促している技術的な背景が、まさに、デジタル技術で、この技術をもってすれば、ますます、伝統ある紙製印刷物もオーダーメード商品ではなく、コモディティ商品にしてしまい、そのうえ、世界を単一市場にしてしまいそうである。日本の中では日本語、国内市場の印刷物の観点しかなく、世界とは隔絶しているため、この大きな流れが見えにくい。
2005年、全欧州で400億ポンドあったデスクトップ市場は大部分が紙製印刷物に流れていたが、近未来ではその大多数が発注者の手元に移行してくとPIRAは予想する。
では、現下の印刷界はお先真っ暗なのであろうか。私はそうとは思はない。印刷界が前世紀から脈々と積み上げた精密複製ハードコピー技術、他の産業界との販促のコラボレーションは大変奥深い資産になっていて、時代と技術が変質してゆくのに呼応し、新しいグラフィック・コミュニケーション・インダストリー(情報加工工業)の観点に立てば、大いに力を発揮して生き抜けるものと確信する。
日本の著名な大会社が拡印刷と言う業態を提唱されていた。これは印刷製造にまつわる縦の工程の広がりのみならず、印刷に近い、デザイン、広告、発送など周辺の横の領域への取り組みを指していた。この縦と横の領域には必ず、中小印刷業が得意先を絡めて独自の事業領域を確立できるニッチ(くぼみ)があると考える。印刷会社の形態も100社、100様に変わっていくのではなかろうか。
エレクトリック・パブリッシング・サービスのデイビッド・ワーロック氏は「印刷物はネットからの合法的な派生物とみるべきかもしれない。」とまで、言う。
古い印刷ビジネスモデルはこれから先、機能しなくなって行くのでなかろうか。新しいビジネスモデルを目指し、時間はかかるだろうが、それをこなすように心掛けねばならないのではないのか。7つの再生戦略を上げたいが、まず、4つのコミュニケーション戦略を上げる。1)送り手戦略、2)メッセージ伝達戦略、3)受け手戦略、4)フィードバック戦略、
それに、2つの生産戦略、5)コミュニケーション・ロジスティック戦略、6)日用品印刷戦略(徹底した下請け印刷戦略)、さらに、オフライン戦略と言う構成である。

1) 送り手戦略
メッセージの創作能力を磨くことである。的をえたデザイン・制作能力があるとここで他社と引き離した価値づけをすることができる。日本WPAが行っている、バタフライロゴ、および環境にやさしい印刷プロセスの構築を目指しているのは、送り手戦略に入る。環境保全価値と言うのも紙製印刷物に加える余地のある新しい価値である。
2) メッセージ伝達
送り手から受け手へ独自のメディア伝達能力をつくる。全国ぷらざ協議会が行っている、フリーマガジン、「月刊ぷらざ」はこの例である。あるエリア内で独自の宅配網を作り上げ、月に1回、フリーマガジン広告誌を全戸に宅配しているが、新聞の読紙率が激減する中で、この宅配メディアが見直されてきている。このように独自の伝達網を一端構築すると、文字通りオンリーワンの地位を手に入れられる。
3) 受け手戦略
ユニークな方法で独自の受け手対象を持つ。郵政公社の民営化に呼応して、業界内でもダイレクトメール研究会が立ち上がっているが、この活動には素晴らしいものがある。冊子小包の制度のもと、特定のメールサービス専門業者は独自の対象先リストをもっていて、しかも、割安料金でダイレクトメールが発送できる。地域レベルに限定し、こまめにこのような冊子小包の仕事を受注していく中で、名簿のメンテナンスのメンテが図られてゆく。
4) フィードバック戦略
受けての反応、声を送り手に戻す方法を構築する。例えば、アンケート集計、コールセンター的な業務などを積極的にこなし、本来、発注者側が行うべき、集計・反応読み取りなどの諸業務を印刷会社がこなしてゆくことだ。この強みは母集団が増えることによって、独自のソフトパワーとなってゆく。
5) コミュニケーション・ロジスティックス
これはマーケティング・サービス・ビジネスに位置付けるもので、コミュニケーション・ビジネスと言う、独占的な領域のビジネスを指すものではない。あくまでコーディネートで、プロセスを所要するものではない。つまり、顧客のロジスティックスの肩の荷の負担をこちらで引き受けるものである。そのロジスティックスの詳細を管理し、時には部門下請化をし、物理的・サイバー的なロジスティックスを引き受ける。
ある紳士服製造・チェーンショップ展開している製造・販売メーカーは、近年、お中元、お歳暮のシーズンにかけ、贈答品通販を行っていた。そのためにはカタログを作り、商品の手当て、受発注管理、臨時コールセンター、運送会社とのやり取りなど、この季節だけのスポットビジネスをこなしていた。出入りの印刷会社は通販カタログの仕事を昨年央のお中元シーズンは輪転機で刷って300万円ぐらいの仕事をいただいていた。ところが、値段は厳しく、利益が思ったように出てくれない。そこでこの印刷会社の社長は、決心し、このメーカーにカタログは無償で刷ってあげましょう、その代りに、このスポットの通販ビジネスをそっくり、印刷会社へ委託させてくれと、申し出た。自社と付き合いのあったコールセンターを活用し、運送会社も取引のある先に切り替え、前年の顧客名簿をもとにDMを打った。印刷会社のロジスティック、フルフィルメント網を活用したおかげで、1.8億円の売り上げに対し、2000万円の粗利を稼ぐことができた。カタログに固守しているとできなかったわけで、自社のロジスティック、フルフィルメント網が利を生んでくれたのである。
6) 日用品印刷
今日、印刷単価が下がっているのは、まさに、受注生産である印刷物が汎用品の日用品印刷の域に到達しているからである。日用品印刷である限り、デジタルでのデーター授受、24時間運転が求められる。事実、下請け印刷会社で隆々と盛業を続けている先は、このことをよく理解し、絶えず、新しい機械設備を導入し、その償却に耐えることをされている。この分野は今後とも、厳然と生き抜ける。いや、逆に設備を持たない営業印刷会社、企画会社などが日用品印刷をこなす先を求めてくる。
従来、日用品印刷をこなす先は、都会部にしか存在しなかったが、今日では、デジタル技術の進歩、全国的な物流網の完備により、地方部でもこれをこなせる先が出てきている。
あるカテゴリーに絞った生産、物流ラインを持ち、日用品印刷をこなす先も現れてきている。このとき、デジタル印刷機をフルに活用しているのが目につく。
7) オフラインメディア
印刷は最近では、オフラインメディアと呼ばれているが、大判プリンターを生かした装飾、看板、壁面装飾がいわく、屋外広告の大きなウエートを占めるようになってきた。米国ではイベント・屋外広告は最も伸びている一角である。この技術的な親和性は印刷のプリプレスに近く、営業的にも印刷の得意先と輻輳する先が多く、注目されている分野である。
紙製印刷物の販路は頭を打ってきているのかもしれない。しかし、需要の頭打ちだから萎むのはいたしかたないと、諦めかけの印刷人が多くなってきているのは大変残念である。日本が敗戦の焦土から、奇跡の復興をなしえたのは、先輩のかたがた印刷人が自らの敗戦の懺悔の意志を込め、事業復興に身を捧げたからであろう。ところが、豊満の時代を迎えたいま、地に足の着いた、印刷事業家が去っていく姿を見ると大変に残念である。先輩から受け継いだ家訓・ビジネスマインドをいかに伝承するかが我々の課題ではなかろうか。友人のある印刷会社の社長は、70歳であるがこの度、信用金庫から融資を受けてある印刷会社を買収された。彼は奥さんと共に田舎から出てきて印刷会社を起こされた立身出世の方である。家業として印刷会社が隆盛を極めるか否かは、経営者の事業欲の問題だけでなく、経営者の伴侶の人生観に左右されているのが今日ではないだろうか。印刷界が作り上げた技術、資産は大変価値あるもので、例えデジタルの世になってもこれを生かす道はまだまだあるのではないのか。自らが事業のロマンをかけて、創業をしていく気迫があると印刷界の未来はまだまだ、開けてくると信じている。

日本水なし印刷協会事務局長
五百旗頭(イオキベ)忠男

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