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2019年03月04日

朱鷺の野生復活活動が、佐渡の農業・環境・食を改善し、低炭素化社会に貢献する。 ――佐渡総合高校GIAHSプロジェクトの続報

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日本WPAが、低炭素杯2019で「日本WPA最優秀未来へのはばたき賞」で顕彰した「佐渡総合高校GIAHSプロジェクト」のメンバーを訪問した。GIAHSとは、世界農業遺産のことで、国内で初めて認定されました。2013年、佐渡総合高校の高校生が、「広げよう!朱鷺の舞う環境を!地域密着環境啓発プロジェクト」名で、佐渡島の環境改善活動をスタートした。

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プロジェクトメンバー
毎年、「農産・加工系列」の2年生がこのプロジェクトを引き継いでいる。
指導教諭の山川敏幸先生と、低炭素杯2019でプレゼンした2名とその仲間たち。
プロジェクトは、当初から佐渡市役所、新潟大学との連携の中で、高校生にふさわしい活動を継続している。

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朱鷺について
環境悪化による野生の朱鷺の絶滅を受け、「生き物を育む農法」という厳しい基準の農法を多くの農家が実践することで、朱鷺の野生復帰が実現した。島ぐるみで環境に配慮した農業に取り組んだことで、国内初の「GIAHS」の認定を受けた。
朱鷺は、動物性のえさしか食べない。ドジョウ、サワガニ、カエル、タニシ、水生昆虫などで、朱鷺は生きるために、一日325kcalが必要、ドジョウは一匹4kcalで、一日81匹も食べる必要がある。

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朱鷺の野生復活
朱鷺に必要な大量のえさが生育する環境を作るためには、農薬・化学肥料を減らし、冬でも水を溜める「江」の整備や、ねぐらとなる森の確保などがある。
「江」は、イネの生育に応じて水田から水抜きをした場合でも、魚などの水生動物が留まれ、水田に水がなくなる冬場でも水生動物が生育できるように水田の脇に整備された細長い溜池のようなもの。

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二酸化炭素排出削減、生物多様性の保護
授業の一環として農薬・化学肥料を5割削減した「減云栽培」に取り組み、4%、約19kgCO2/10aのCO2が排出削減を実現できた。島全体では、出荷される米の8割が、「減云」栽培され、2272トンのCO2の排出量削減が実現した。
生物多様性保護についても生き物調査を実施することで、定量的なデータも発信している。

啓発・交流活動
GIAHSとは何?と題した大人向けの発表、小中学生への出前授業、JAとの協業で米卸売業者への佐渡米のPRや、商品開発、農業ボランティアへの取り組みなど、地域への啓発、交流活動は多岐に渡っている。
佐渡がいかに環境に配慮した農業に取り組み、安全で安心な農産物・農産加工品を作っているかPRは、確実に効果を上げている。この環境に配慮した農業への理解が、佐渡米の消費拡大につながり、農家の収入増を図り、農業離れを食い止める効果となっている。

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農業・農産物加工
プロジェクトメンバーの高校生達は、「佐渡こしひかり」米の田植えから稲刈り収穫までを実習と、この米を使ったおにぎりメニューの開発や、耕作放棄地の草刈りのボランティアや耕作放棄地を借り受けての小豆の栽培、栽培した小豆を使用した伝統食「しんこ餅」の作り方の小学生への食育授業など、食文化継承、地産地消に力を入れている。秋に収穫した佐渡米は、小学校の給食で子どもたちが食べているとのこと。

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将来は・・
誰にでもわかりやすく佐渡の価値を伝えてきた。さらには、農家の経済価値への還元を図るため、地産地消を前提にした商品開発や、販売活動やイベントを強化していくとの力強い決意が聞けた。
このプロジェクトメンバーの高校生は、土砂降りの中での稲刈りや急峻な棚田での作業などの辛さを振り返るとともに、将来も佐渡を離れないとも語っている。対馬暖流の影響で比較的過ごし易い気候、汚染も少ない環境が気に入っている、海の幸にも恵まれている、佐渡コシヒカリも最高においしい、星もきれい、歴史があり人情に厚い・・・。

未来へはばたく若者らしいコメントに感激した訪問であった。